<試写室>須賀健太主演「江戸前の旬season2」好きなことを仕事にする難しさ
心の機微を巧みに演じる須賀健太
「自分らしいって何だろう?」旬はいきなりこの難問にぶつかる。ある常連客から、親方と同じネタを握るよう言われ、腕を試されるのだ。しかも、旬をものすごい目力でガン見し、「親方のすしと味は雲泥の差。姿形は似ているが模倣だ」と言い放つ。他の客も大勢いる前でそんなことを言われると、普通号泣して立ち直れないだろう。
しかし旬は落ち込みながらも、“己のすし”を求めて、閉店後に黙々と練習。そんな折に親方が倒れてしまう。「父さんがいない間も店を守れるのは旬だけ」と鼓舞する姉の言葉に、「うん…」とだけ一言返事する須賀健太の演技が見事だった。頑張ろうという気持ちの中にも不安がにじみ、なんとも言えない曇った顔を見せるのだ。この場面に限らず、須賀は難しい心の機微を丁寧に表現している。
さらに親方不在の中で、再び常連客に対してやらかしてしまう。そんな旬に、親方は自分が新米職人だったころの話を聞かせることで父親としての“背中”を見せる。そして、旬が、父親の師匠に修行を請うことを決めたとき、そっと“背中”を押すのだ。
落ち込むこともあるが、「すしが好き」という気持ちが旬を突き動かしている。以前須賀はインタビューで、「演技以上に楽しいと思えることはない。『好き』は原動力になるし、つらくても続けることができる」と笑顔で話してくれ、その姿がまさに旬とリンクしていた。好きなことを仕事にするのは難しいことだろう。しかしそこに確固たる目標を見つけ、ゴールに向かって努力する旬と、そして須賀から目が離せない。
文=ち01