ここに挙げたのは、ほんの一部に過ぎない。これほど多彩なドラマが盛り込まれる中、主役2人も要所要所で存在感を発揮した。
落ち着きがないと煙たがられながらも治五郎亡き後のオリンピック招致をけん引したのは紛れもなく“まーちゃん”こと田畑だし、初回からひたすら走り続け、水をかぶり続けてきた四三は東京五輪の最終聖火ランナー・坂井義則(井之脇海)に水をぶっかけて背中を押しただけでなく、自身もストックホルム五輪のレースに最終回でゴール。54年8か月6日5時間32分20秒3という記録を打ち立てた。
2019年はラグビー日本代表のスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」が「現代用語の基礎知識選 2019ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に輝いたが、全員がそれぞれの場所で輝き「いだてん」という一つの大きな流れを作ったその姿はまさしく「ONE TEAM」の精神そのものだ。
オリンピックというイベントをテーマに据えてはいるが、「いだてん」で描かれたのは楽しいことばかりではなかった。震災、戦争、人種差別の苦しみも描かれた。政治の汚い部分も描かれた。生きるのに精いっぱいの市井の人々も描かれた。人が生きるうえでぶつかるあらゆる事象がこれでもかと盛り込まれた中身の濃い1年間だった。
だが、今胸に残るのは「結局、面白がったもん勝ち」なんじゃないか、ということ。
第37回では、序盤からずっと日本人のオリンピックへの憧れをけん引してきた嘉納治五郎が晩年、“幻の1940年東京オリンピック”を前に「これから一番面白いことをやるんだ、東京で!」と叫び、第40回では田畑が「アジア各地でひどいこと、むごいことをやってきた俺たちは、面白いことをやらなきゃいけない」とオリンピックへの決意を口にした。
全力で面白がるために準備をし、本番ではすべてを出しきる。その格好良さ、すばらしさ、美しさが胸に迫る。あんなに大松監督にしごかれた女子バレーボールチーム主将・河西(安藤サクラ)だって言っている。「私たちは青春を犠牲になんかしていない!だって、これが私の青春だから」楽しいことに向かってすべてをささげることが青春で、そこに年齢は関係ないのだ。
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