“ギャング映画好き”な俳優・尾上松也、イチオシ映画は“なるべくして生まれた名作”『アンタッチャブル』<ザテレビジョンシネマ部>
「アンディのアクションが本当に格好いいから観てほしい」
――本作最大の見せ場といわれるのがクライマックス、ユニオン・ステーションの大階段での銃撃戦。後の映画史に大きな影響を与えたとされる名シーンですが、最初ご覧になったときはどう思われましたか?
松也「展開が読めなさすぎて。一体どうなっちゃうんだろう? どこからどう襲撃されるかもわからないし、怪しい人たちもたくさんいるし、意味ありげに乳母車に乗った子どもを映したりするし…パニック状態でしたね」
――そこからの展開は怒涛でした。
松也「アンディのアクションが本当に格好いいから観てほしい。これでブレイクしない俳優はいるか!? って思いましたね。ラストのネスからマローンの形見を託されたときのアンディも好きです。アンディの目に涙がたまるんです。でも涙は出なくて、涙が出そうになるところで留まってるのが男らしくていいですよね。あの男が泣きそうになってるってだけでグッとくるものがあります」
――そう言われてみると、珍しく彼の感情がよく表れているシーンでした。
松也「基本的にはクールで、負けん気と殺気は常にあるけれども、どれだけ仲間に対する思いがあったのかっていうのはあそこで明らかになりますよね」
「お金がないからこそ撮れるシーンもある」
――一説によると、監督はクライマックスに汽車の中での銃撃戦を考えていたそうですが、予算が足りず、『戦艦ポチョムキン(1925)』のワン・シーンに着想を得て大階段にしたとか。
松也「お金があって何でもできればいいシーンが撮れるってわけではない、お金がないからこそ撮れるシーンもあるっていうのが映画の面白いところですよね。僕はこういう名作が生まれるときって、それが普段は失敗と思えるようなことでも、そうなるべくして全てがうまくいく方向に流れていくような気がします。例えば、共演しているそうそうたるメンバーの中で言ったら、アンディ・ガルシアはまだ素人っぽさが芝居に残っていて、演技派とか技巧派っていう感じはしない。でもそこが逆に新人警官役にすごく合ってました」
――彼らのアンサンブルあってこその作品でしたね。
松也「大御所のショーン・コネリーがいて、演技派のデ・ニーロがいて、スター性のあるケヴィンがいて…そこに、まさにこれからっていう無名の新人アンディが加わる。それぞれの魅力や境遇が、芝居を越えたもっと奥底でぶつかり合っているのを感じましたし、それがこの作品の良さにつながっているんだと思います」