日本テレビディレクターがドキュメンタリー制作への思いを語る
3月4日(日)に日本テレビにて「リアル×ワールド ディレクター被災地へ帰る 母と僕の震災365日」が放送される。
同番組は、同局の人気バラエティー「所さんの目がテン!」の総合演出を務める武澤忠ディレクターが、東日本大震災で被災した福島・相馬の自身の実家と母親の姿を自身のカメラで追い続けるドキュメンタリーシリーズの集大成。母親が震災後から書き続けているという手記日記を交えながら、震災から再生しようとする家族の絆を描き出す。今回、「阪神淡路大震災」「地下鉄サリン事件」「神戸児童殺傷事件」などさまざまな災害や事件を最前線で取材してきた武澤氏が、いちテレビマンとして番組に対する思いを語ってくれた。
――この番組を企画したきっかけを教えてください。
いわゆるテレビで取材されている被災者の方々はほんのごく一部で、テレビカメラを向けられても答えられる人とか、ニュースが取り上げるくらいいわば被害が極端な方が登場しているんですよね。ほとんどの人が自分が出るのはおこがましいと思っていて、一見被害が少ない人だったり、まだ精神的に伝える段階になっていない人たちがほとんどです。そういう人たちの心の中にどんな苦悩があって、どんな風に生きてるのか、自分の家族を通して“被災者”のリアルな姿が描きたいと思ったんです。
――お母様はこの番組に対してどのような思いでいらっしゃいますか?
母は始めはぴんときてなかったと思います。自分の家も被災したから、テレビマンとしてカメラで記録に撮っておきたいという話をしていて、当初は番組になると想定してなかったからリラックスして取材を受けていました。前回の2回の放送を見て、照れて嫌がってるんですけど(笑)、母を通じて“声なき被災者の声”を等身大で視聴者に伝えたいという思いを母親として理解してくれています。母も僕じゃなかったら撮らせなかったと思いますしね。
――途中カメラを止めたくなる時はありましたか?
家の解体のときは「カメラを回してる場合か」と思ってつらかったですね。自分の思い入れのある家が壊れる瞬間は自分も感傷に浸りたいし、泣き崩れてる母を支えてやりたい。だけど「こういう悲しみが他の何万件にもあるんだよ」って伝えるためには、カメラを回さなきゃいけないと思いました。撮るのをためらったことももちろんあるけれど、僕しかできない、やらなきゃいけないって強く思いました。
――最後に番組の見どころをお願いいたします。
これは震災のドキュメントではなく、“家族の絆の物語”と位置づけています。テレビカメラが回ってると思うと言えないような苦悩は、どの震災の番組よりもリアルに表現できていると思っています。震災から1年…、テレビでは取り上げられない“ごく普通の被災者たち”が今どんな思いで生きていて、明日を見つめているのかを等身大に描いていきますので、ぜひご覧ください。
3月4日(日)昼4.30-5.25
日本テレビにて放送