高橋克典ドラマPが語る3「人情という言葉を広めたい」
毎週木曜に放送中の高橋克典主演ドラマ「京都人情捜査ファイル」(テレビ朝日系)。実在する組織“犯罪被害者支援室”を舞台に、高橋演じる戸隠ら支援室メンバーが被害者に寄り添いながら事件の解決を目指す、異色の新作ミステリーだ。
そんな新しいフォーマットのドラマを手掛けるテレビ朝日の池田邦晃プロデューサーにロングインタビューを敢行。掲載第3弾の今回は、高橋の脇を固めるキャストについて、京都の魅力などについて語ってもらった。
松下由樹や松平健ら、主人公を演じる高橋の脇を固める豪華キャストがもたらす“相乗効果”とは。
「3人(高橋、松下、松平)の化学反応がすごいです。実際に見ていただけたら分かると思いますが、3人のシーンはめちゃくちゃ強い! 克典さんが演じる戸隠は、捜査一課の刑事時代に自分の奥さんが事件に巻き込まれて殺されていますが、その経験があるから被害者支援室で型破りなことをする。自分自身につらかった時期があるから、被害者遺族のために事件の早期解決をしたいんです。
でも、それに対して戸惑うのが室長の仁美(松下)。戸隠のやっていることに戸惑い、いろんなリアクションをしながらも、徐々に戸隠は正しいんじゃないかと思い始める。だから仁美は視聴者と一緒に戸隠のやっていることを“体感”してくれる役だとも言えますね。その松下さんがすごくいいんですよ! 自分の仕事、被害者支援への“矜持(きょうじ)”が人一倍ある人だから。そこに異分子(=戸隠)が入ってきたことによって反発するけど、被害者を支援したいという気持ちを誰よりも持っているので、戸隠のやっていることを否定できなくなる。
毎回松下さんの感情がむき出しになってしまうところがありますが、そこは泣けますよ。戸隠と仁美がぶつかり合いながら理解し合うところを、後ろで『ワッハッハ!』って笑いながら見守るのが松平さん(笑)。
“権力の象徴”でもあるので、松平さんが出てくれて良かったなと強く思います。この2人を包み込んでくれるのは松平さんくらいでしょう。この存在感はなかなかないですよ! 時には、松平さん演じる岩瀬が自ら事件解決に乗り出すこともあるんですけど、それも見どころの一つかな。『暴れん坊将軍』さながら殺陣も楽しんでやってくれているので」
主な撮影場所である京都の町並みもとても美しく描かれている本作。テレビ朝日が撮影で重宝する京都の魅力はどこなのだろうか。
「古いものがきちんと守られているというか、安定感がありますよね。“人情”の捜査をする人たちなので、そこに京都の文化が入り交じるというのは親和性がある感じがします。京都の人たちは“心”を大事にするから。タイトルも人情捜査ファイルですから。
町並みだったり、文化だったり、町の人の心意気だったり、考え方だったりというのは空気感として合っているのではないかなと思います。松平さんという京都が似合う人もいますし(笑)。
『京都』と『人情』という言葉は相性がいいですよね。『人情』という言葉を広めたいんですよ。恥ずかしくてあまり口に出す機会はないかもしれませんが。人情という言葉を使うと優しくなれるような気がします。新番組の立ち上げの際には理不尽なこととか、現場でも大変なことはあるんですが、番組タイトルだからみんな『人情』と口に出すので、何となく優しくなれるんですよ。
誰か倒れてもおかしくないくらいつらい時もあるんですが、このタイトルだから優しい気持ちで乗り切れるのかもしれません。ドラマが終わったら『人情』という言葉が若者の間でもはやるといいですね(笑)。
『そこは人情でしょ!』みたいな。口にしづらい言葉ですけど、この人たちがやっていることは人情だって、ドラマを見ていただけたら分かると思います。長いタイトルだけど、人情という言葉が一人歩きしてほしいですね」
そして「木曜ミステリー」枠といえば長寿シリーズ。今作もシリーズ化を期待できそうなフォーマットだが、構想などはあるのだろうか。
「構想はありますが、まずは今回のシリーズですね。“事件解決プラスワン”という新しいフォーマットが作れていると思うので。そこを皆さんが面白がってくだされば、いろんなことができるのかなと。実際に犯罪被害者支援室の方に聞いても、支援室としての活動が難しい部分もあるらしいので。
例えば本当は被害者なのにマスコミが加害者として報道するケース。被害者だから支援しなければいけないけど、捜査一課は犯人だと思っている。そういう時は、捜査一課から『被害者と距離を置け』と言われるらしいんですよ。でも実際にはぬれぎぬで本当に被害者なわけじゃないですか。
事件で苦しい思いをした上にマスコミや刑事から冤罪(えんざい)の汚名を着せられるという“二重の苦しみ”を背負った人を支援しなければいけない。だから犯罪被害者支援室の人でも対応するのが難しい状況って結構あるので、いろんなことができると思うんですよ。テレ朝ってたくさん刑事ドラマをやっていますけど、犯罪被害者支援室を通してみたら全然違うドラマになるんだなと思いました。
そういう意味では、当然シリーズ化したいなと思っていますし、もっとこのフォーマットでいろんなことを描いてみたいという気持ちは持っています。シーズン1で皆さんに面白がってもらって、こういう警察官もいるんだなと思っていただけたらうれしいです」
主題歌は山下達郎の書き下ろしの新曲「マイ・ガーディアン・エンジェル」。好きな俳優だという高橋が主演する本作への楽曲提供に並々ならぬ決意で臨んだという。
「山下さんが歌う主題歌はいいです。主題歌をお願いする際に、『京都人情捜査ファイル』への思いを山下さんにも熱く話したんです。それに対するアンサーとして帰ってきたのがこの曲なんですが、優しいし、強い! 山下さんはこの曲を作るに当たって制作スタッフや役者にも内緒で京都に来られたそうです。
『スタッフさんに迷惑を掛けちゃうから』と誰にも言わずに。一人で京都の町を散策しながら曲を書いてくださったらしいんですよ。主題歌を作るためにそこまでやっていただけるのは制作スタッフ冥利(みょうり)に尽きるというか、とてもうれしいことですよね。事件解決プラスワン、そして主題歌にも注目してオンエアを楽しんでください」
毎週木曜夜8:00-8:54
テレビ朝日系で放送