【前説に聞く】風藤松原に直撃、前説ってどんな仕事?
番組の収録前、観客と拍手や掛け声の練習をしたり、トークで盛り上げたりして現場を温めるテレビ業界の大事なお仕事「前説」。
そんな前説の方々を取材しテレビ番組の舞台裏を探るインタビューシリーズの第2回は、前回に引き続き「櫻井有吉アブナイ夜会」(毎週木曜夜10:00-10:54、TBS系 ※関東地区ほか夜9:56スタート)で前説を務める風藤松原の2人(風藤康二、松原義和)を直撃。
第1回では収録の裏側や、MCの櫻井翔と有吉弘行の素顔を語ってもらったが、今回は前説の仕事ぶりや、ビジネスシーンでも生かせる盛り上げテクについて聞いてみた。
前回「【前説に聞く】「夜会」の櫻井翔、芸人もうなる“司会術”」より続く
――前説を拝見させていただいたんですが、とても盛り上がってましたね。お客さんを巻き込んだ漫才形式の前説というか、ちょっとしたショーのような楽しさがありました。
松原:ありがとうございます。でもこの番組でやらせていただくまで、前説は1回ぐらいしか経験がなかったんですよ。ほとんど未経験でした。
風藤:なので最初は先輩とかいろんな人に話を聞いたり、前説を見学させてもらうところからでしたね。「櫻井有吉アブナイ夜会」の前説は、初めは同じ事務所のトップリードさんと交互にやっていたので、トップリードさんに聞いたり。あとうちの事務所に「ごきげんよう」(毎週月~金昼1:00-1:25、フジテレビ系)の前説を18年半務めたアンバランスさんっていうプロ中のプロがいるので(笑)、アンバランスさんに相談したりして。最初は四苦八苦しながらやってました。
――前説の先輩方からはどんなことを教わりました?
松原:もともと僕らは元気な芸風じゃなかったので、まずは元気にやらなきゃいけないと。
風藤:笑わせるより盛り上げに徹しろと言われましたね。別に面白いこと言ってウケても、お客さんが温まってなければ本番が盛り上がらないので。
松原:僕らの前説はいろんな先輩のネタの“いいところ”をちょっとずつもらってるんです。拍手の練習も、客席を真ん中から二つに分けてチーム分けで練習するとか、変なチーム名を付けることでお客さんをいじってみたりですとか。
風藤:あとトップリードさんはショートコントの人たちなんですけど、ショートコントだとネタの区切り区切りでお客さんが拍手しやすいって言うんで、僕らも最初のころは慣れないショートコントを何個かやってみたんです。でも普段やらないことをやってもやっぱりウケないんですよね(笑)。
松原:今の形に固まるまでは大分(時間が)かかりましたね。
――日によっては、お客さんがおとなしい日もあったりするんでしょうか。
松原:ありますね。一発目のボケで分かります。「あれ、いつもならここで盛り上がるはずなのに」って。
――そういう日の対策法はあるんですか?
風藤:とにかくこっちが元気よくやる、ってことぐらいで、秘策はあんまりないですねぇ。
――本番収録の盛り上がりに関わってきますから、大事な仕事ですよね。
風藤:やっぱり櫻井さん、有吉さんが出てきた時の最初のリアクションは気になりますね。
松原:お客さんが「キャーッ!」ってなってくれたら、盛り上がってる証拠です。残念ながら「わー」と、ちょっと落ち着いた感じの時もたまにありますね。あと、臨機応変に対応できるかどうかって言ったら、まだそこは不安要素があります。
風藤:たまに、急に(前説を)伸ばしてくださいとか言われることもあるんですけど、OKが出るまでずっとやってなきゃいけないので「あぁ、もうあのネタもやったし、次は何やろう」みたいになって、これが結構大変ですね。あとは急に「中説入って」って言われたときもテンパりますね。
――中説ってなんですか?
松原:収録途中のセッティングに時間がかかるときなんかに、お客さんのテンションを落とさないようにまた前に出て場をつなぐことがあるんです。
風藤:突然言われて「えっ、何しよう!?」ってなっちゃいます。
――その他にもお二方の「前説あるある」があったらぜひ聞かせてください。
風藤:そうですね、僕ら前説の内容はいつも大体同じなので、何度か観覧に来られている方がいらっしゃると、まったく笑わないんですよね(笑)。そういうとき、ちょっと恥ずかしいです。
松原:あと、後ろのスタッフさんの声が耳に入ってくるときがあるんですけど、ときどき「あれ、怒られてるのかな…」って心配になっちゃいます。
――優しいですね(笑)。前説を担当されるようになって、何か変わったことはありますか?
風藤:営業がちょっとやりやすくなりましたね。営業も前説のお客さんと似ているというか、僕らのことは知らないんだけど、でも盛り上げなきゃいけないっていう。以前はただ単にネタをやるってだけだったんですが、前説チックなことも取り入れるようになって。
松原:お客さんとの距離を縮める作業じゃないですけども、ネタ以外に、そういうこともできるようになりましたね。
――決して味方ではない人たちをこちら側に引き込みたい状況というのは、我々一般人も営業活動や打ち合わせなど仕事の場で経験することがあるのですが、前説のように、そんな相手を味方にするコツがあれば教えていただけませんでしょうか。
松原:うーん、お笑いとはまた状況が違うと思うんですが、(ビート)たけしさんがよくやるマイクにごつんじゃないですけど、一回わざと失敗みたいなことをしておくと良いかもしれませんね。ハードルが下がるんで、温かい目で見てもらいやすくなるといいますか。
風藤:「この人ばかだな」って思われたほうが多分笑っていただけるので、ばかになりきるのがいいかも知れませんね。
松原:あと、僕はネタや企画を考える打ち合わせの時に、わざと「いや不可能だろ」ってツッコまれるような案をひとつ用意したりします。要はその打ち合わせの場でウケるためだけに用意した、使えない企画というか。
風藤:隙を作って相手より下に見てもらったほうが、きっとかわいげがあると思うんです。
――なるほど、ありがとうございます。やり過ぎない程度に今度試してみたいと思います(笑)。まだまだお話をお聞きしたいのですが、残念ながら時間が来てしまいました。きょうは貴重なお話をありがとうございました!
毎週木曜夜10:00-10:54(関東地区ほか 夜9:56スタート)
TBS系で放送