ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第110回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞 受賞インタビュー

撮影=石塚雅人

草彅剛

最後に「快なり」と言えた慶喜は幸せだったと思います

これまでに主演男優賞を6回受賞。今回は大河ドラマ「青天を衝け」で初の助演男優賞を受賞されました。「青天を衝け」は主演の吉沢亮さんとダブル受賞です。受賞のお気持ちをお聞かせください。

吉沢亮くんとダブルでですか? ありがとうございます。うれしいです。毎週毎週「青天を衝け」を応援してくれた方のおかげですね。大河ドラマは長いですから。1クール3カ月の撮影でも大変なのに、1年以上の長きに渡って一つの作品を作る。頑張ったかいがあったんじゃないかなと。ご褒美をもらえた気分ですね。
形に残る賞をいただいて、ドラマのスタッフの方も喜んでいるんじゃないかなと思います。


今回の徳川慶喜役は、将軍になる前の若きところから、苦悩の末に第15代将軍になり、激動の時代を駆け抜けた人物でした。クランクアップから少したった今思い出される、思い入れのあるシーンはどこですか?

慶喜はとてもミステリアスな役でしたね。戦の最中に一人で江戸に帰ってきちゃったりして。最初から最後までつかみどころがなくて、派手じゃないというか、たくさん敵を倒してのし上がっていく将軍でもないし。でも人間らしくてとても魅力的な人物だなと思っています。

思い入れのあるシーンは、撮影前からずっと練習をしていた馬に乗るシーンとか、慶喜の周りの家臣たちが亡くなってしまう悲しさだとか、堤真一さんと芝居をしたこととか。前半では、父・斉昭(竹中直人)の死を聞かされるシーンは悲しかったな。謹慎を言い渡されていて、ずっと部屋にこもっていて、父の死に目にも会えなくて。そういう時代だったんですね。一人たたずんで父の死を聞いたところは忘れられないです。


家臣の中では、慶喜の一番身近にいた円四郎(堤真一)との別れのシーンは、見ていてグッときました。

堤さんとは今まで何度か芝居をしたことがあったので、堤さんが円四郎を演じてくれて、やりやすかったなというのはありました。雨の中で、堤さんは、その前からびっしょりぬれて倒れていて。僕の中では最初のクライマックスというか、長い間、慶喜を演じるに当たっても、ここが肝になってくるシーンだなと思っていましたね。あの前に「私は輝きが過ぎる」なんて、うぬぼれたような思いを円四郎に伝える2人のシーンがあって、ちょっとほわっと温かい感じになって別れた後だったので、余計にこたえましたよね。


その後、大政奉還があり、江戸時代は終焉を迎えます。慶喜としては、その後の隠遁生活の方が人生の中では長いわけですよね。ああいう“枯れた”草彅さんの演技はあまり見たことがなかったのですが、「年を重ねるごとに歩き方や姿勢を変化させていく演技が素晴らしかった」という声がとても多かったです。何か演技の参考にしたことはあったのですか?

後世まで慶喜を描いた作品はあまりなかったと思うので、とても興味深い作品になったと思います。枯れた感じを出すために参考にしたことは特にないですね。無意識の中でそうやって動けるというか。やっぱり扮装もヘアメークも老けて変わってくるので、身体も自然な感じでイメージできました。

実は、年を取ってからの方が今の自分に近いという感覚だったんです。きらびやかな衣装を着て将軍然としているときより、後半の方が演じやすかった。自分の年齢が合ってきてるんだろうね。もちろん、自分より全然年上ですけど。将軍として時代の真ん中にいるときの方が自分には遠くて、監督に言われるがままにやっていました。セリフ回しにしても動きにしても。それが一番いいんです。

後半はだんだんいい感じに役がなじんできて、撮影が飛び飛びで気持ちをつなげていくのが大変だったりもしたんですけど、亮くんと会うと、自然に慶喜に戻れるんです。そこも掛け合いなのでね。僕がいないときも亮くんはずっとやっていて、栄一の顔をしていたから、それを見てると自然に引き込まれて心が熱くなるものがあって、慶喜になれたという感じはありました。


隠遁生活のときの慶喜はあまり人に会わなかったそうですけど、栄一が会いにきたときだけは特別で、シーンの中でも楽しそうに会話をされてました。実際演じるときのお2人も、そこにふっと戻れるような重なるところがあったんですね。

特に会話をするわけではないんですけどね。感覚的にはそうだと思います。


草彅さんは取材などで「何も考えてない、勉強してない、自分以外の部分は読んでない」とお話されていますけど、とても緻密に見える演技なので、その天才ぶりに驚いたとの意見もありました。

本当ですか? じゃあ僕、天才なんじゃないですか(笑)。だって本当に考えてないですから。緻密に計算されてるように見えるって、まあ、それが僕のいいところなんじゃないですかね(笑)。見る人がいいなと思ってくれればいいわけで。正直言えば、「戦から逃げた将軍の苦しみ」って分からないですから。だから役作りとか本当にないです。素直にやる。監督に言われたことを素直に感じる。本当にそれだけです(笑)。


今回の大森美香さんの脚本はどう読まれてましたか?

大森さんの脚本はとても素晴らしいですね。心に残っているセリフはいっぱいあります。円四郎に語った「輝きが過ぎる」もそう。なかなか言わないですよね、自分で自分のことを「私は輝きが過ぎる」なんてね。

あと、最後のほうで伝記を書くに当たって語るところで「人は好むと好まざるとに関わらずその力に引かれ、運命の導くままに引きずられていく」とか、こんなすてきな言葉をよく思い付くなって。言葉のチョイスが素晴らしいと思いました。「人は、誰が何を言おうと、戦争をしたくなればするのだ」とか、ぽんと一言、的を射た言葉にしてくださる。

みんなが悲しく大変な時代だったなというのを、またドラマチックにセリフで魅了してくれるところがとても好きです。最後に「鳥羽伏見」って言えて良かった、みたいな。そんな感じですよ。ちゃんと答えを導いてくださっていた。


たしかに、最後にこの作品の中での慶喜の謎が解けたような。

そうなんです。あとやっぱりいいなと思うのは「尽未来際、共に」というあの言葉。いい言葉ですよね。あれは円四郎が慶喜に言った言葉で、それを最後に栄一に言う。「快なり」もそうだよね。父、斉昭が言っていた言葉で、慶喜のラストカット、最後の最後の言葉が「快なり」で。いやぁ、名シーンばかりですね。


最後の言葉はどんな気持ちで言ったんですか?

あのときは斉昭の、ちょっと竹中さんの顔を思い浮かべていたかな。人生、悔いなかったっていう。いろいろあった人生だけど、栄一にそう言えた慶喜は幸せだったと思います。


この「青天を衝け」はご自身にとってどういう作品になりましたか?

吉沢くんと仲良くなれたなと思って。同志というかね。吉沢くん、クランクアップのとき僕がプレゼントしたシャンパンを、最終回のときに飲みますと言ってくれていて、実行してくれたらしいんですよ。うれしかったです。久しぶりの連続テレビドラマで、いつもそうですけど、そのタイミングタイミングで、自分の中でエネルギーを注げるような、注いで良かった役と巡り会えて、いい思い出ができました。

(取材・文=吉野千絵)
青天を衝(つ)け

青天を衝(つ)け

「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一の活躍を吉沢亮主演でドラマ化。幕末から明治へ、時代の渦に翻弄(ほんろう)され挫折を繰り返しながらも、高い志を持って未来を切り開いていく姿を描く。脚本は連続テレビ小説「あさが来た」(2015年9月〜2016年4月)などを手掛けた大森美香が担当する。

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