ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞 受賞インタビュー

(C)日テレ

芦田愛菜

お芝居をする楽しさを再認識させてくれた作品でした

受賞のご感想を聞かせていただけますでしょうか。

このような名誉ある賞を頂くことができて、とても光栄に思います。監督やプロデューサーさんとはシーンやその各話のテーマについていろんな話をさせていただき、役や作品と向き合う時間をたくさん頂けたことに感謝しています。
お芝居をする環境を整えていただき、そして納得がいくまで伸び伸びとお芝居をさせていただいて、一度原点に戻ってお芝居をする楽しさを再認識させてくれた作品でした。

いろいろな方に「鵜久森さん!」と声をかけていただいたり、「鵜久森さんがいなくて寂しい」というように、役名で呼んでいただいたりする機会が多くて、そのことがとてもうれしくて、自分的にも役に没頭できた作品でした。


鵜久森叶を演じるにあたり、意識されていたことを教えてください。また、タイムリープしていることで、演じる難しさはありましたでしょうか?

鵜久森さんは優しいんじゃなくて、強い、という言葉が本当にピッタリだと思います。自分の心にうそをついたりせずに、一つ一つの言葉をしっかり相手に伝えようとするのも鵜久森さんのいいところだと思います。その強さをどうやって表現するかということを考えながらお芝居をしていました。

鵜久森さんのせりふを覚えるために何度も口に出すと、まるで自分に言い聞かせているように感じて、私自身も彼女のせりふを受け取る一人として、言葉が持っている力のようなものを感じていました。

タイムリープしていること、途中で2周目を終えてしまうことは物語の最初から知っていたので、その設定とつじつまが合うようにお芝居をすることは意識していました。一方でクラスメートのみんなはそのことを知らなかったので、クラスのみんなや視聴者の方にあからさまにばれてしまわないように、でも少し「あれ? どういう意味だろう?」とニュアンスを残せるような、微妙なあんばいを探すのが難しかったです。

「ああ、あのせりふ、そういう意味だったのか!」というような、2周目だからその言葉が出てくる、少し裏の意味を含んだせりふがところどころに散らばっていたので、それを見つけながら、どんなふうに演じるかを考えるのは大変でしたが、演じがいがありました。実は、早く皆さんに気づいてほしいなぁ、いつ気が付いてもらえるかなと、少し思ったりもしていました。


投票理由として、「1話のいじめを受けていることを告白する演技が、今でも忘れられない」「最初の告白シーンがこのドラマの方向性の全てを決定づけたと思う」などの声が届きました。1話のいじめを告白したシーンでのエピソードを教えてください。

とても長いせりふだったので、ただ気持ちを読み上げているだけになってしまわないようにするにはどう演じたらいいのか、とまずは悩みました。実際にクラスメートから不遇な目に遭わされていたシーンは描かれていないので、つらい毎日が続く中で、それでも学校に行かなければならなくて叫び出してしまいたい気持ちってどんな気持ちだろうと考えたり、かなり自分を追い込んだシーンでした。

「それでは決を取ります」と言われ、自分をいじめることに賛成の人は手を挙げる場面があったのですが、少しずつ、でも確かにクラスみんなが手を挙げていって、誰も自分を助けてくれない、と視覚的に感じる瞬間は、鵜久森としてはもちろん、私自身としてもとてもつらくて、涙が自然と込み上がってきました。

1話のラストシーンということで、まだ生徒役の皆さんともそんなになじめていない、序盤の撮影だったので、ほぼ初めてお会いする方がたくさんいる中でシリアスな場面を演じなければならないという不安やプレッシャーが、敵ばかりの教室で自分の気持ちを初めて吐き出す鵜久森さんの気持ちと重なり、自然に感情を乗せられたような気がしています。

スタッフの皆さまがいつも私たち役者に寄り添ってくださる素敵なチームだったので、このシーンでも「何度も同じテンションで演じるのは難しいだろうから一発本番、長回しでやろう」と言って環境を整えてくださって。だからこそ、その一回に全力投球させていただけて、感謝の気持ちでいっぱいです。

私が話している間だけでも撮影では10分以上あるような長回しの中、私方面の撮影だと、反対側にいらっしゃる松岡(茉優)さんのお顔は全く映らないのに、それでも優しい顔で真剣に鵜久森さんの言葉を受け止めてくださって。それがすごくうれしくて感情がさらに高まり、お芝居に厚みや深みを出していただいた気がしています。


鵜久森さん以外の生徒さんのシーンでも毎週、緊迫感がありました。九条先生やほかの生徒さんのせりふでグッときたものや、脚本について感じていたことを、教えてください。

3話で、眉村君(福崎那由他)と日暮君(萩原護)が「僕たちをハブってください」と、相楽(加藤清史郎)に土下座をするシーンは印象的でしたし、心に迫るものがありました。

誰しも人間なのだからどうしても馬が合わない人はいるものだけど、学校という狭い社会の中でその枠から逃げられないつらさをひしひしと感じますし、自分には自分を理解してくれる人がいる、だから自分を犠牲にする必要なんてないんだ!と一歩踏み出せる強さは、なかなか学生時代に持ちにくいと思うので勇気をもらいました。

脚本について、一つ一つの言葉がとても胸に刺さるせりふが多いなと感じていました。九条先生や、私含め生徒たちの思いが真っすぐにつづられていて、全く同じ経験をしたことはないけれど、自分に重なる部分を見つけることができたりして、そういうせりふを登場人物たちが語ってくれることで、少し心が軽くなったりするような気がしました。脚本を頂く度に、心のもやもやを晴らしてくれる言葉に出会わせてもらっていて、次の脚本が待ち遠しかったです。

また、後半では待ち時間に共演者の皆さんと「誰が犯人なんだろう?」と推理で盛り上がったこともあり、みんな次の台本を心待ちにしていました。


九条先生とは1話から心を通わせ、松岡茉優さんとのシーンも多かったと思います。松岡さんの印象や撮影中、休憩時間でのエピソードもあれば教えてください。

教室では九条先生として格好良い背中を見せてくださる一方で、撮影の待ち時間には親しみを持って話しかけてくださったり、時々冗談を言われたりもするお茶目な姿を見せていただきました。

化学準備室のシーンなど、対面でお芝居させていただく機会が多く、毎回、九条先生の力強い目の光を感じました。松岡さんがお芝居を受け止めて返してくれる心地良さと、演技の中で九条先生に全てを受け止めてもらって味方になってもらえる気持ちが合わさって、自然と鵜久森さんの気持ちを引き出していただいていました。


劇中では途中退場のような形でありながら、最後まで存在感が抜群でした。クランクアップはどのシーンだったのか、その際のエピソードも教えてください。

クランクアップのシーンは、本編の最後のシーンでした。6話からはほとんどクラスメートの皆さんとはお会いできていなかったので、そこで久しぶりにクラス全員で会えて。ドラマの中ではみんなが「鵜久森さんが~」と鵜久森さんのことを考えて名前を呼んでくれるのがうれしかったですし、久しぶりに行った現場では「鵜久森さん!」や「愛菜ちゃん! 久しぶりに会えたね!」と声をかけてもらえて本当にうれしかったです。

悲しい場面や苦しいシーンも多かった撮影でしたが、クラスみんなが一緒に卒業できるという温かい雰囲気で撮影を終えることができて良かったです。

松岡さんとスタッフの皆さんのお心遣いで、クランクアップの際にクラス全員分の卒業証書と一輪のお花をご用意いただき、まるで本当の卒業式のように感じて、終わってしまうのがとても名残惜しかったです。


最後に「最高の教師―」ファンへメッセージをお願いいたします。

目を背けたくなってしまうような認めたくないことでも、自分の気持ちにしっかりと向き合って寄り添うこと、そして、その自分の気持ちに素直になって一歩踏み出すこと。忘れてしまいがちなことに対して一度立ち止まって考えるきっかけをくれる作品でした。

大きさは人によって違うかもしれないけれど、生きていれば悩んでしまうことも、孤独を感じてしまうことも必ずあって、そんなとき、一人で考え込んでしまうことが多いかもしれませんが、あなたは一人じゃないんだよ、と抱き締めてくれる、そんなドラマだったのではないかなと思います。

学生の皆さんはもちろん、かつて学生だった全ての方にお伝えしたい言葉がたくさん詰まっています。作品の中で一生懸命に思いを口にする登場人物たちの言葉が、少しでも多くの方の心のどこかに、届いたらいいなと思います。
最高の教師 1年後、私は生徒に■された

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「3年A組―今から皆さんは、人質です―」(2019年)を手掛けたプロデューサーと監督による“新時代”の学園ドラマ。卒業式の日、教師の九条(松岡茉優)は4階から突き落とされるが、「死にたくない!」と願った直後、1年前の始業式の日の教室に戻ってくる。九条は、真相を突き止めるために、生徒と本気で向き合っていく。

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