ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞 受賞インタビュー

(C)TBS

阿部サダヲ

“地獄のオガワ”こと小川市郎は人間らしく心を揺らす、純愛の人

「不適切にもほどがある!」で主演男優賞を初受賞しました。投票した方からは「昭和からやって来たハラスメントの権化のような役で弾けた演技を見せた」「これだけ笑わせて泣かせる芝居ができる俳優は他にいない」「歌って踊る新しい魅力を見せた」という声が寄せられました。

ありがとうございます。このドラマが始まったときは「演じるのは“地獄のオガワ”で不適切な人」と聞いただけだったので、この先どうなるのかなと思いつつ演じていました。第5話で家族の話になり、そこからの展開は難しいかなとも思いましたが、脚本の宮藤官九郎さんが市郎を愛すべき人物として描いてくれたのはさすがでしたし、また、監督の演出に助けられたので、本当にありがたいですね。

昭和10(1935年)年生まれで、50代、高校生の娘を育てている市郎は、どんな人間だと思って演じましたか。

思いがけずタイムスリップしてしまうけれど、令和の時代にも適応し、すごい順応性がある人だという感じがしましたね。もともと、いろんなことに興味があるんだろうし、根っこがすごくいい人で、とにかく純愛。亡くなった奥さんのこともずっと愛していて、娘も愛している。最初は「ケツバット」なんてする教師で、嫌われているようなイメージがありましたけれど、そうじゃないというのが、後半、出てきましたね。


市郎が昭和61(1986)年から令和6(2024)年にタイムスリップするという設定はどう思いましたか?

まずバスでタイムスリップするというのが面白かった。たしかにバスなら普通に乗っちゃうし、それがタイムマシンだったというその発想がいいですよね。実は2024年の技術で自動運転、運転手は人形だったというのにも笑ったし、最終話で主題歌を歌ったCreepy Nutsがバスに乗って昭和にやって来るという展開も「しゃれたことをするな」と思いました。その後、中学校の卒業式で彼らがライブをするのも、演出が上手くて違和感なく見えたのではと思います。


その卒業式で、市郎が生徒たちに「お前らの未来は面白えから」と言う場面は、タイムスリップした教師にしか言えないセリフでした。

やっぱり市郎は令和に行ったことで成長したんでしょうね。最初は教室の机でタバコを吸っているような先生で、「これ、いいのかな」という気もしたけれど、最終話でやっと教師らしいことを言えた。僕はあまり教師の役を演じてこなかったので、あの場面は感慨深かったですね。


宮藤さんの「週刊文春」のエッセイには「阿部くんとは同世代だから、時代背景は説明しなくても分かるでしょう」というような記述もありました。

そうですね。宮藤さんとは同い年で、ずっと一緒に活動して同じ時代を生きていたから、感覚は分かりますけどね。ただ、僕は1986年、16歳の頃は野球ばっかりしていたから、漫画の「少年ジャンプ」が出てくるところでは、「北斗の拳」は分かるけれど「シェイプアップ乱」ってなんだ?と(笑)。宮藤さんはさすが、当時から僕よりいろんなことにアンテナを張っていていろんなことを知っているなと…。意外に、令和の最新の事情にも詳しいし。


市郎が高校生の娘を心配していたり、エモケン(池田成志)という脚本家が出てきたりと、宮藤さん自身が反映されている部分もあったのでは?

そうですね。宮藤さんにも娘がいますし、親子の関係を描くことが多いですよね。このドラマでは阪神大震災が出てきたけれど、東北の震災も経験していますし、そういった要素が起承転結の中に詰まっているなと。だから、僕も宮藤さんと磯山晶プロデューサーが組んだ「池袋ウエストゲートパーク」(2000年TBS系)からこの座組に何作も出てきて、これまでの演じたものが全部出せたような気がしますね。


毎回、オリジナルのミュージカルシーンがあり、「第3話では阿部さんがQUEENのフレディ・マーキュリーのように歌うなど、振り幅が広く、それを全て成立させていた」という意見も寄せられました。

まず歌を録音し、そのあとに振り付けを覚え、最終的に撮影のときにみんなで一緒に合わせる…。僕も共演の役者さんたちもやったことがないことをしたから、新鮮な気持ちになれました。僕もバンド活動(グループ魂)では歌うけれど、踊りながら歌うということはないし、面白かったですね。第1話は本当に舞台のミュージカルのようでしたが、そこから変わっていったので、どんな曲が来てどんな振り付けになるのか、純粋に楽しみにしていました。第3話の「Everybody Somebody's Daughter」ではピアノを弾きながら歌い始めたけれど、これ、弾いてない(笑)。なのに、いかにも弾いてるっぽく歌うという…。


キャストにはミュージカルのイメージがない人もいましたが、みなさん歌も踊りも上手でした。

みんなやっぱりできるんだなと感心しました。仲里依紗さんがこうして王道のミュージカルソングを歌うのも貴重だし、吉田羊さんと袴田吉彦くんの「あなたは板東英二」も良かったし(第7話)、最終話ではみんなそろって踊っていましたからね。今回は監督さんが5人いて、ミュージカルパートもそれぞれのアイデアで「俺だったらこうする」というこだわりをもって演出したことが、見る人に面白いと思ってもらえたんじゃないかな。


宮藤さんが先に歌詞を書いて曲ができていったそうですが、「グループ魂」で長年組んでいるので、阿部さんから監督に「宮藤さんのやりたいことはこうなのでは」という解釈や提案もしたのでは?

いえ、ないですね。そういうことは、いっさいないです(笑)。曲ができて振り付けの八反田リコさんがダンスを考え、監督たちが演出するのに、完全にお任せしていました。八反田さんと演出の金子文紀さんが意見をぶつけている現場に宮藤さんもいたのに、ひと言も挟まず黙っていたそうですから(笑)。


最終話、市郎が迎えた結末についてはどう思いましたか?

オチとして、未来から小野武彦さんが出てきたのには驚きましたね。これはちょっと文句言えないなみたいな(笑)。宮藤さんの「タイガー&ドラゴン」(2005年TBS系)は落語家の話でしたけれど、本当に落語のサゲのように、上手くまとまったなと…。そこで未来へ行くかどうかだけれど、市郎はずっと揺れていますよね。自分の愛する娘を助けには行きたいけれど、その先、孫娘が生まれてくる未来を変えてもいいのかという迷いがある。後半、「昭和に戻れないということは、死なずに済む」と思ったり「最終回が決まっていないなんて、最高じゃん」と言ったりするのも、人間らしくていいんじゃないですかね。


娘の純子を演じた河合優実さんが助演女優賞を受賞しました。

河合さんは芝居についてすごくいろいろ考えた上で、本番では遠慮せずぶつかってきてくれるから、うれしかったですね。コメディーも上手いし、歌も踊りも上手いし、絵も上手なんですよ。スタッフTシャツの絵を描いたりして、たいしたもんだなと思いました。その河合さんと仲さんが、役柄の上で本当は母と娘なんだけれど、それを言わずに仲良くしているという関係性も好きでしたね。


仲さんとは「恋する母たち」(2020年)でも共演し、そのときは恋人役でした。

仲さんは面白いですよ。今、言った渚(仲)と純子(河合)のシーンでもすごくいい演技をしているなと思ったら、「本番中、河合さんの人中(じんちゅう、唇と鼻の間)がかわいくて、そこしか見てなかった」って。それであんな集中力のいる場面が演じられるんだと(笑)。それで僕は初めて「人中」という言葉を知りました。本当に面白いキャストの皆さんと一緒に撮影ができて、楽しかったです。誰かが言っていたけれど、タイムマシンがあるなら、江戸時代にも行けるわけだし、時代劇のスピンオフなんてできたらいいですね。

(取材・文=小田慶子)
不適切にもほどがある!

不適切にもほどがある!

阿部サダヲ主演の“意識低い系タイムスリップコメディー”。ひょんなことから1986年から2024年の現代へタイムスリップしてしまった“昭和のおじさん”小川市郎(阿部)が令和では考えられない不適切な言動を繰り返していく。共演は仲里依紗、磯村勇斗、吉田羊ら、脚本は宮藤官九郎が手掛ける。

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