ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞 受賞インタビュー

撮影=阿部岳人

草彅剛

やっぱり音楽は楽しい! 役で遊ばせてもらっていた感じ

連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK総合ほか)の羽鳥善一役で、助演男優賞を受賞された草彅剛さん。今までに主演男優賞は7回、助演男優賞は2021年の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)の徳川慶喜役以来、2回目となります。また今回「ブギウギ」は、主演女優賞の趣里さんもダブルで受賞です。今のお気持ちをお聞かせください。

ありがとうございます。趣里ちゃんも受賞ですか。うれしいですね。ちょうど1年前の今ごろの季節から大阪で撮影が始まったのかな。一つの役を長くやるというのは集中力を維持するのも難しいし、大変なこともあるんですけど、一番大変なのは主演の趣里ちゃんでね。僕が東京で違う仕事をしていても、趣里ちゃんは大阪でずっと福来スズ子になっていたので、僕が大阪に行くと趣里ちゃんのおかげでパッと切り換えて羽鳥善一になることができた。趣里ちゃんに感謝です。

羽鳥善一を演じるにあたって意識したことはありますか?

服部良一さんというモデルの方がいらっしゃって、曲を聞いたりお写真を拝見したりはしていましたけど、監督さんが楽しそうにやってくれればいいみたいな感じがあったので、楽しい雰囲気でできました。いつも役作りといってもあんまり考えないので、ただ趣里ちゃんと遊ばせてもらったという感じですかね(笑)。モデルの方がいるといっても、逆を言えばどうにでもなるというか、一番趣里ちゃんも僕も楽しくなるシーンになればいいなという気持ちでいつもやっていました。


初回の冒頭、楽屋から飛び出していくセリフがとても印象に残っています。

「トゥリー、トゥ、ワン」ってところですよね。あそこは台本そのままなんですよ。監督の福井充広さんという方が…何人も監督がいらっしゃるんですけど、その方が熱くて面白い方でね。3は「スリー」ではなく「トゥリー」だと。脚本の足立紳さんがこだわったセリフだと撮る前に聞いていたので、福井さんが言う通りにやったんです。そしたら、あんな感じの羽鳥になりました。


「家族や周りの人は振り回されたりもしたが、そんなところも含めて愛されるキャラクターに作り上げていた」との意見もありました。戦争があったり時代的にはツラい苦しいときもありましたけど、それでも楽しい雰囲気は伝わってきました。

やっぱり音楽は楽しいものですからね。羽鳥は音楽を一番優先的に考えるような男で、いつも頭の中で音楽が鳴っていた。他の人が真面目に考えるときでも、真面目じゃないわけではないんだけど、音楽のことばっかり考えているから、ちょっとズレてしまっているようなイメージで。結局、何も考えないで、楽しんでいればそうなるんですよね。


ご自身との共通点はありましたか?

どの役でも演じる役は僕自身だと思っているから、僕が役に出ていると思うんです。音楽ももちろん好きだし、僕で言えばデニムが好きだったり、ギターが好きだったり、そういう“好き”という心みたいなものを重なり合わせていって、羽鳥善一という人物が作られていったんだと思います。


印象に残っているシーンはありますか?

思い出深いシーンばかりなんですけど、最初の「ラッパと娘」をスズ子が歌うところで、ピアノを弾きながら何度も「もう1回、もう1回」と言うところは印象深いですかね。笑いながら厳しい、みたいな。あそこは結構順撮りで、スズちゃんとのお芝居も一番最初の方だったので、とても印象に残っています。


楽しいシーンでいうと、羽鳥の作曲2000曲のパーティーのとき、スズ子と茨田りつ子(菊地凛子)の間でラインダンスをやるシーンも楽しかったです。最後に羽鳥が壮大にコケたのはアドリブだと、趣里さんがある番組でおっしゃってましたけど。

みんなアドリブだとか、僕がスゴい!みたいに言ってくれるんだけど、全然そうじゃなくて。台本のト書きにあったんですよ。「踊ってへっぴり腰の羽鳥善一はへたりこむ」って。だけど、そこちゃんと演出してくれないんですよ。ラインダンスから「へたりこむ」のはどうやるんだよ!と思うじゃないですか(笑)。

で、僕もテキトーだから、最後へたりこまないといけないんだなと思って、2人と手をつないで一緒にラインダンスを踊って、本番でポンと(足を蹴り挙げて)やって、へたりこんだだけの話なの。別に何も計算してないんですよ。みんなをビックリさせてやろうとか、アドリブとかじゃなくト書きどおり。しかもト書きには「へたりこんだあとに、会場爆笑の渦」とかって書いてあるわけでさ、罰ゲームだよね。半分ね。結果的には一番焦ってるの、僕だから。まあでも、エンターテイナーだから、そのぐらいはやらないと、と思って(笑)。


アハハハ、さすがです。スズ子が歌うステージのシーンも毎回楽しかったです!

大阪のNHKのホールがとてもきれいで、そこでいつも撮っていました。あのステージは「ブギウギ」の見どころでしたよね。趣里ちゃん演じるスズ子が踊りも歌もいつも毎回新しいのを覚えて。それを見るのも僕は楽しかったし、そのときに羽鳥善一の指揮者の部分も映るじゃないですか。普段家では子供みたいに音楽のことしか考えてなくて、奥さんの麻里さん(市川実和子)に怒られてばかりだったけど、ここはちゃんとタキシードを着てピシッとした姿を見せられるところで、やっぱり指揮者なんだなって思ってもらえる大事なシーンだったので、毎回しっかり演じました。朝からああいう華やかなステージが見られて、いい朝ドラだったと思います。


ラスト近くで、スズ子が歌手を引退するというときに、2人が対峙するシーンも見ていてグッと来ました。

僕自身、最後までこんな大事な役割があるなんて思ってなかったんですけど、趣里ちゃんと長く撮影を重ねてきたので、長い時間を共にしていた2人の築き上げた時間が、ああいうシーンを作ってくれたんだなと思いました。

「ブギウギ」にはいろんな物語があって、スズちゃん自身、お父さんやお母さん、弟との別れがあったり、せっかく子供が産まれるのに愛助さんが亡くなってしまったり。でも、羽鳥善一のところにシーンとして最後は帰ってくるので、とても大切なシーンになるんだなと思ってました。そういう皆さんにバトンをもらって、最後、福来スズ子は歌手として「引退」というところにこの物語は着地するんですよね。とても長い間走って、大きなバトンをもらって、最後ゴールできたみたいな、そんなイメージで最後は演じました。


朝ドラの撮影が終わって、今改めて思うことはありますか?

朝ドラを経験して、ここが僕自身変わったとかは今は分からないけれど、何か成長している部分があるとしたら、また次の作品に生かされていくのかなとは思っています。今も違う作品の撮影をしていますけど、僕は朝ドラをやって何か得たことを今表現できているのかなとか、そんなことは漠然とだけど思ったりはしてる。まあ、なんでしょうね。いつも本当に現場が楽しくて、楽しかったー!で終わって、少し寂しさが残るんだけど、その寂しさもちょっと心地いいっていう感じかな。

そんな僕がこうして賞を頂けたのでね。これをステップアップに、このトロフィーを掲げて“ジャズ”できるように頑張りたい。皆さんの応援があって、「ブギウギ」を愛していただけたからこそ、僕も最後まで演じられたと思うので、これからも皆さんの心を楽しく、ズキズキワクワク動かせるような役に巡り合えるように頑張っていきたいと思います。見てくれた皆さん、一緒に仕事をしてくれたスタッフ&キャストの方々、全ての方に感謝しています。

(取材・文=吉野千絵)
ブギウギ

ブギウギ

趣里主演で、激動の時代の渦中、ひたむきに歌に踊りに向き合い続けた歌手の波瀾万丈の物語を描く。ヒロイン・鈴子のモデルは、ブギの女王と呼ばれた戦後の大スター・笠置シヅ子。底抜けに明るいヒロインが、多くの困難を乗り越え、歌手の道を突き進み、人々に勇気と希望を与えていく。脚本は足立紳、櫻井剛が担当。

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