第120回ザテレビジョンドラマアカデミー賞総評

人気ジャンルで新機軸を打ち出した2作が強さを見せた2024年4月クール。医療ドラマの「アンメット ある脳外科医の日記」(フジテレビ系)は、子鹿ゆずる、大槻閑人による漫画を基に、記憶障害のある女性医師と、彼女の記憶に残っていない婚約者の脳外科医が心を通わす様を繊細に描いた。「温かく優しい雰囲気で進む物語に涙が止まらなかった」「記憶喪失設定が大渋滞だった春ドラマで一番リアリティーがあった」「映像が美しく細部までこだわっていた」と絶賛され、作品賞、杉咲花の主演女優賞、若葉竜也の助演男優賞、脚本賞、監督賞、ドラマソング賞の6部門を制覇した。

オリジナル作「アンチヒーロー」(TBS系)は、長谷川博己が主演男優賞、堀田真由が助演女優賞を受賞。異色の法廷劇で、検察の横暴に手段を選ばず立ち向かう弁護士の姿を描いた。「弁護士なのに犯罪者を無罪にするという設定が新鮮」「巧みな構成で伏線回収が楽しみだった」と広い層に好評だった。

作品賞3位は桐野夏生の小説をドラマ化した「燕は戻ってこない」(NHK総合ほか)。「代理母問題をリアルに描き、エゴイズムについて考えさせられた」とストーリー展開で魅了。

4位の「季節のない街」(テレ東系ほか)は、宮藤官九郎が脚本だけでなく企画・監督も務め、「仮設住宅を舞台に被災難民が抱える闇に斬り込んだ」とうならせた。5位は木村拓哉主演の「Believe―君にかける橋―」(テレビ朝日系)。「逃亡劇にハラハラしながらも、夫婦の絆にグッときた」という声が寄せられた。いずれも社会性のあるテーマを盛り込んだ意欲作で、“ドラマの強度”が評価された。