作品賞は「MIU404」 新井順子P『第8話のラストはPと脚本家のせめぎあいが…(笑)』<ドラマアカデミー賞・インタビュー前編>
脚本家に伝えた「これは辛すぎるからやめましょう」
――リアリティーのあるストーリーとキャラクターの魅力でドラマファンを熱狂させ、毎回Twitterでトレンド入りするなど注目されました。
(コロナ禍で)4月にスタートできなくなったとき、「(放送開始を)待っています」というコメントをたくさん頂きました。こんなに多くの人が楽しみにしてくださっているのかと…。そして6月に第1話を放送したときも、好意的な意見が多かったので、ほっとしましたね。特に「キャラクターが面白い」という意見が多く、「綾野さん、こういうキャラもできるんだね」「星野さんは『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年、TBS系)の平匡さんのイメージが強かったけど、今回はまったく違うキャラで面白い」と感想を頂いて、手応えを感じました。
第1話はあおり運転の話で、ドラマの始まりなのでライトな感じに。第2話は殺人犯の逃走ものでちょっと深くして、第3話では高校生たちを出して青春ものにと、いろんなパターンを作れて楽しかったです。現場のスタッフの間でも「何話が好き」というチョイスがバラバラで、よく連ドラではひとつのエピソードに人気が集中しがちなのですが、いろんなタイプのストーリーを作ることにより、好きなエピソードがそれぞれにできたのは良かったと思います。
――そういった試みもあったこのドラマですが、人気がどんどん高まったのはなぜだと思いますか?
なぜでしょう(笑)。私にもわかりませんが、なるべく明るく見やすい内容にしようとはしました。例えば、第8話、伊吹の恩師である蒲郡(小日向文世)が逮捕される切ない回の前には、トランクルームで一風変わったキャラクターたちが登場するカオスでポップな第7話がある…というようにバランスを取りました。
特に、新型コロナウイルスの感染拡大があり、視聴者の皆さんは大変な状況にあるので「今、苦しく辛いものは見たくないのでは」と思い、見終わった後は後味が悪くないならないように…。第8話のラストで蒲郡が連行されていくところも、最初に野木さんが書いてくれたのはもっとショッキングで、違う結末でしたが、読んで「野木さん、これは辛すぎるからやめましょう」と話して、あのラストになりました。
それでも伊吹は打ちひしがれたけれど、志摩が彼の手を取って引っ張り上げることで、視聴者の方も切なく苦しいだけで終わらないで見られたのかなと思います。そのへんはプロデューサーと脚本家のせめぎあいがあったんですよ(笑)。でも、コロナ禍の状況じゃなかったら、野木さんの最初の案のとおり作っていたかもしれません。