「俯瞰で見たとき、僕という演者はいらなかった」
――佐藤さんは、テレビ出演が増えると共に「改めて『芸能界のど真ん中にいるような人間ではないな』と確信した」とブログに綴っていましたね。なぜ、テレビ出演に違和感を覚えたのでしょうか?
違和感というよりも、俯瞰で見たときに、僕という演者はいらなかったんですよね。たとえば、今で言うと、トイレや掃除の話をするとかだったら、明確な役割があるので、僕が行った方がいい場所もたくさんあるはずです。でも当時は、ひな壇とかで本当に何もしないで帰ることが多かったんですよね。
それは何でだろう、って考えたときに、僕は「お笑い芸人と言えば、こう!」みたいな価値観にハマらないっていうことに気付いたんです。本来はお笑い芸人たるもの、目立ちたい、テレビに出たい、賞レースで優勝したい、深夜のネタ番組からゴールデンに上がって、ゆくゆくはMCになりたい……っていう世の中の人が求める、お笑い芸人像と言いますか、定型みたいなものがあるわけですよ。
そもそも僕は、自分がすごく面白いからダウンタウンさんみたいになれる、なんて思ったことすらなくて。もちろんどこかでああいう風になりたいと憧れる瞬間もありました。でも、やっぱりどう考えても無理だなって思っちゃったんですよね。
その姿勢でお笑い芸人を始めているので、ようやくネタ番組に出させていただいて、お笑い芸人としてご飯を食べていけるようになったとて、共演しているMCの方や横並びにいる芸人の方たちとのモチベーションや実力差、ポテンシャル……そういったものを諸々考えたときに、勝てるわけない、と思ったんです。見た目や環境も含めて、生まれながらにして持ち合わせた才能という部分も大きいんでしょうが、とにかくこのひな壇にいる数年後に、MCになったりするなんていう画は全く思い浮かびませんでした。
――お笑い芸人としての王道から外れていると気づいたとき、当たり前の枠に入れない絶望みたいなものがあったかと思います。それとどう向き合い、消化し、自身の道を切り拓いていったのでしょうか?
僕、もうずーっと人生に絶望してきてるんですよ。小学校って、「友達100人できるかな♪」みたいな感じで、明るい生活を想定して入るじゃないですか。でも僕は、小学校1年生の一年間を過ごして、全然友達ができなくて。クラス替えをして、小学校2年生が始まった日に、「あぁ、ダメだ。またこの生活が続くんだ…」と思ったんです。
――悟るのが、早いですね(笑)。
そうなんですよ、人生で最初の絶望が小2だったんです(笑)。これはもう、親や先生の言うことを聞いて、なるべく周りに迷惑をかけないように我慢して生活していくしかなさそうだなって。あと僕は小1から小6までサッカーチームに入っていたのですが、どんなに一生懸命練習しても全然上手くならなくて、後から入ってきた子にどんどんレギュラーを取られていくんですよね。僕は真面目なので、「一生懸命練習してたね」というお情けで、試合に出させてもらることもあったのですが、僕が出ない方が試合が回るなというタイミングがいっぱいあって……子どもながらに気づいちゃうじゃないですか。
こんな感じだと、勉強できなきゃダメだと思って頑張ってみたんですが、結局真ん中よりちょい上くらいまでしかいけませんでした。加えて影も薄かったので、修学旅行の班決めとかでは忘れられるし……。これって誰のせいでもなくて、僕がただ持ち合わせて生まれてきたものなので、どうしようもなくて。
そういう感じで、僕の人生はずーっと絶望の繰り返しだったので、お笑い芸人になって、芸能界のキラキラした実力者の皆さんたちやこの業界の構図みたいなものを目の当たりにしたときに、「あぁ、この感じか」と思ったんです。“僕とは違う”という絶望は、これまでに何度も見てきたので、すぐに飲み込めました。でも、一般的に敷かれているお笑い芸人というレールをもう辿っていくのは無理だなとも思いましたね。
11月12日(木) 発売
本体価格980円、定価1,078円(税込み)
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