TBS「報道特集」金平茂紀キャスターが現地取材で体感した2020アメリカ大統領選挙
――長く報道に携わられてきた中で感じられた、政治に関わることへの意識について聞かせてください。
自分の反省も込めて言いますが、評論ばかりしていないで、関わればいいじゃないかということですね。よく観客民主主義と言われますけど、日本には「政治は自分がやることじゃない」と思っている人が多い。
声を上げず、選択肢を作らない。つまり当事者意識がない。そこが一番大きな問題です。切実な問題に対しては、地元の人が声を上げて、議論をしていく。「仕方ない」と勝手に思っちゃうから変わらないんだと思う。当事者意識は、自分の身の回りから変えていかないと変わらない。
政治や権力は、永田町、県庁レベルのことだけではなくて、会社や学校など一つ一つの組織の中も、実は政治なんです。アンフェアなことや、影でコソコソやるようなことには「おかしいじゃないですか」と声を上げるべき。声を上げていくことが政治なんだと思う。
僕ももうすぐ67歳で、いい年ですが、今ぐらいになって初めてそういうことを意識しはじめました。
アメリカの民主主義の根深さというか、草の根のレベルでの政治参加姿勢はすごいですよ。大統領選だけではなく、区長や市長、知事を選ぶことにとても熱心ですからね。
――最後になりましたが、「報道特集」や金平さんの今後についてお聞かせください。
「報道特集」は、1980年にスタートした調査報道番組。40年続いている調査報道番組は他になく、日本で一番歴史の長い番組です。初期からの調査報道をやろうという姿勢は変わっていなくて、それは番組の誇りです。
週に一度の番組だから時間をかけて取材できる。デイリーが出来ないものをやる。まさかこんなものやらないだろうという取材ができる。調査報道の特集は、新聞でいうと署名記事みたいなもので、取材者の個性や物の見方がどんどん前面に出ていいと思う。この人じゃないとこういうことを言わないよなとか、この人じゃないとこういうことを取材しないよなとか、そういったことが前面に出た方がいい。
その精神は、料治直矢さんとか、堀宏さん、田畑光永さん、初期の人たちからずっと続くもの。発見があり、考えるきっかけを提供することはすごく大事で、その精神が40年たっても生きているんじゃないですかね。この番組に参加できてとっても良かったと思います。
僕はTBSで報道しか知らないでずっと育ってきた人間で、たくさんの先輩、亡くなった筑紫哲也さんからもいっぱい「大切なこと」をもらいました。そしてそれを次の世代にどうやって引き継いでいくかを考える歳になりました。大事なものがたくさんあるので、ちゃんと引き継いでいくことを残りの人生でやってこうと思っています。
くたばって去っていくときに、次の世代が生きていく日本や世界を、こんな状態で引き継いで残していくのは良くないと思う。今さえ良ければ、金さえあれば、自分さえ良ければいいという刹那的な価値観の中で終わるのは良くないなと。
◇プロフィール◇
金平茂紀
TBS報道局で「ニュースコープ」副編集長、モスクワ支局長、ワシントン支局長、「ニュース23」編集長、報道局長、アメリカ総局長などを歴任。ワシントン支局長時代、アメリカに関する幅広い分野での報道を評価され、2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞している。著書に「ロシアより愛をこめて」「世紀末モスクワを行く」「電視的」「二十三時的」「ホワイトハウスから徒歩5分」「テレビニュースは終わらない」などがある。
毎週土曜昼5:30ー夜6:50、TBS系で放送
キャスター:膳場貴子、金平茂紀、日下部正樹
スポーツキャスター:齋藤慎太郎(TBSアナウンサー)
製作著作:TBS
制作プロデューサー:辻真
番組プロデューサー:吉岡弘行
編集長:曺琴袖
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