佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊らの演技に「非常に幸せでした」映画「サイレント・トーキョー」原作者×監督対談
波多野「原作はすごく“愛の話”だなと思った」
──クリスマス・イブ。恵比寿で爆発事件を起こした犯人から、次の標的は渋谷・ハチ公付近だという爆破予告が…。事件に巻き込まれる人、捜査する人、犯人、犯人を知る人……様々な人々の姿を追う中で意外な真実が浮かび上がる、というストーリー。
小説でも映画でも「普通の人々」に時間を割いていらっしゃることが伝わってきました。だから読んだ人、観た人は他人事にはできなくなります。小説は2016年に書かれていますが、2020年の今、映画になって公開されることがぴったりのように感じました。
秦「この小説を構想し始めた時も『日本は大丈夫だよね』という空気があって、その根拠がわからないなと思っていたんですよね。いつテロが起きても不思議ではない、と。なので映画化のお話をいただいた時の一番の心配は、公開前に、本当にこういうことが起きるのではないか、ということでした。もちろんないことを願っているけれど、安易にないとは決めつけられないよなという気持ちは、ずっと変わらないですね」
波多野「僕は原作を読ませていただいた時に、すごく“愛の話”だなと思ったので、そこは大事にしたいなと思いました。誰しも、他人のために動いているところがあって……。今回のコロナでもそう感じた方が多いと思うんですが、『うわべだけではないものがいい』という方向に行っている気がして。時代に後押しされている映画だという気はしますね」
秦「僕も、人間って基本的には愛で動くものだろうと思っているんです。テロリストの側にも、自分の愛を踏みにじられるような経験があったりして……愛が言い訳になって、ひどい犯罪が起きることもある。愛には、そういう怖さもあるなと思うんですよね。今、多様化と言われている割には、これが善でこれが悪です、悪は憎みましょうみたいな決めつけが強い気がしていて。でも正義も悪も相対的なもので、あっち側にはあっち側の正義がある……そういう想像力を持てなくなると、いつか『サイレント・トーキョー』で起きたような事件が、現実でも起きかねないと思っていて。この作品を通じて、そういうことが伝わってくれたらうれしいなとは思いますね」
波多野「まさにそう感じます。犯人も、渋谷に集まってくる人も、想像力が足りていないんですよね」
https://silent-tokyo.com/
監督:波多野貴文 脚本:山浦雅大
原作:秦 建日子『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(河出文庫刊)
出演:佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊/中村倫也、広瀬アリス、井之脇 海、勝地 涼 ほか