「NHKスぺシャル パンデミック 激動の世界」が伝える社会への視座<大越健介キャスターインタビュー>
――第5回では、国家間対立の視点から、コロナウイルスワクチン争奪戦も伝えられます。
大越:難しい問題ですよね。ワクチンの争奪戦は実際にもう起こっており、先進国がこぞって、米・欧の開発したワクチンを買いあさっています。日本もそう。それは国民を守るために当然やることで、まず自国民優先という争奪戦が起きている。
独自開発を進めている国もあるけれど、置き去りにされる国は間違いなく出てくるでしょう。そこにどうやって手を差し伸べるかという取材を行っています。一つの理想の姿に近い、その取り組みの例を紹介します。
――主に危機に焦点を当てる番組シリーズとして、内容は暗くなりがちかと思いますが、光明を見つけるという思いはございますか?
大越:番組の作りとしてどうしても、深刻な事態を直視しなくてはいけないので、深刻な事態の連打になるところはあります。見ていてものすごくハッピーな気分になる番組ではないけれど、そこは一つの狙いで、そんなに能天気ではいられないという現実はちゃんと伝えるべきだと思っています。
ただやっぱり、これまで放送したシリーズ全体がそうですが、大きな衝突に発展せずに、共存・共栄を図ろうよというメッセージは、必ず盛り込んで、深刻な事態も乗り切ることができるんじゃないかという示唆のようなものは入れていると思います。
第二次世界大戦以降、世界的な戦争は起きていないけど、一方では難民が発生したり、テロがあったりという悲劇も重ねられている。その両方をちゃんと見なきゃいけない。
今新型コロナのパンデミックという悲劇に襲われていますが、そこは実態として見ながら、でもこうした危機を乗り越えてきた歴史もあるよという視座も忘れないというのが番組の基本姿勢です。