秋山黄色、アニメ「約束のネバーランド」のオープニング曲をリリース!「僕にとって作曲は、頭にあるものを模写している感覚」
「何でも書くアーティスト」っていうのは伝わってほしいなって
秋山黄色にとって初のフィジカルシングルということで、初のカップリング曲「日々よ」が収録されている。
「元々曲の原型はあったんですが、『アイデンティティ』という曲と大きく意味合いがつながるものでなければいけないとは思いました。僕の曲は一部を除いて死について歌っていて、『日々よ』も『アイデンティティ』もそうで。14歳くらいのとき、病んで『俺死ぬんだな』って思ったことを『日々よ』では書いてるんです。『アイデンティティ』はもうちょっと命サイドに目を向けていて。だからどうやって生きていくかを考えなきゃって。生きる意味なんて誰も持ってないから、結局みんな自分で手段を作っていかなきゃいけないと思うんです。でも不安とか恐怖って、それ以上に楽しいことを考えるか、それより苦しいことを考えるかのどっちかで紛らわさないといけなくて。14歳くらいから僕はずっとそういう状態なんですね。そういう精神状態で苦しいよりは、『お金がない』とかの現実的な問題の方が個人的にはマシで。だから人によって何に追い詰められるかの尺度は全く違って。『日々よ』はそういうことを書いています」
「ストレートな歌詞には基本的に抵抗がある」そうだ。
「分かりやすい詞を書きたい気持ちもあるんですけど、俺ポップスシンガーとしてあるまじきことに、分かりやすさに対して懐疑的なんです。人に何かを説明するときに簡単な言葉を使ってかみ砕いて伝えられるのが良いって言いますけど、それに対しても懐疑的で。難しい言葉が存在している意味って、難しい言葉の方が純度が高いってところもあるのかなって。難しい言葉のまま伝えて、相手もそのまま理解できるのが理想で。分かりやすく伝えることって、ポップスでは最重要項目なんですけど、僕はそれによって重要な何かが多少なりともこぼれ落ちてしまったとしたら、すごく後悔するんです。でも、分かりやすいから伝わる層の素晴らしさも知ってるので。だから、分かりやすい/難しいレベルじゃない、でも共感してもらえる、まだ言葉になってないような第三言語を目指してて。やっぱり最先端で曲を作るアーティストには、誰も知らないウルトラCみたいなものを探す義務があると思ってるんです。人の言葉を借りた綺麗な詞だけを書いていると僕は苦しいので。僕が好きなマキシマム ザ ホルモンの歌詞は第五言語くらいまでいってると思う(笑)。自分が好きな曲ってそういうのが多いのかな。そのアーティストが放つから自然で変に聴こえない言葉。それを目指すのがモチベーションになってるところもあります」
ドラマ「先生を消す方程式」(テレビ朝日系)の主題歌「サーチライト」、映画「えんとつ町のプペル」挿入歌「夢の礫」、そして「アイデンティティ」と、3カ月連続で強力なタイアップシングルをリリース中。3曲ともサウンドアプローチが大きく違う。
「『何でも書くアーティスト』っていうのは伝わってほしいなって。僕はそもそも音楽が好きで、今も書きたいときに趣味で曲を書いていて。だからいろんな音楽の楽しさを伝えたいとは思っています。同じ時期に出るということで、歌詞に関して矛盾が起こらないようにはしてて。この3曲は僕的には全部『救いたい』って気持ちを込めて書きました。昔は『人を救おう』なんてよこしまな気持ちを音楽に持ち込んじゃダメだって思ってたですけど、今はそんなことを言っている時代じゃなくて。僕コロナ関係なく、いろんな人をなくしちゃってて。だから、僕のエゴでそんなことを言ってる場合じゃない。今はみんなを助けたい。でも僕はひねくれているので、明るい時期になったら、また暗い曲ばかり書く日々に戻ると思うんです(笑)。そういう意味でも早く時代が良くなってほしいんですよね」
取材・文=小松香里
ソニー・ミュージックレーベルズ 1210円
収録曲●アイデンティティ/日々よ
あきやま・きいろ=1996年3月11日生まれ、栃木県出身。作詞、作曲からジャケットアートワークまでを手掛ける2017年から宇都宮と東京を中心にライブ活動を開始。夏フェス等の出演を経て、2020年3月にメジャーデビュー。以降ドラマ主題歌、映画挿入歌を担当するなど快進撃が続く。3月3日(水)に2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』をリリースする
秋山黄色HP
https://www.akiyamakiro.com/