<にじいろカルテ>深川栄洋監督インタビュー「高畑(充希)さんは、刹那的でいられる稀有な女優さんだと思います」
僕は監督としてトラップのようなものを毎回仕掛けるようにしていました
――本連載のご登場いただいたキャストのみなさんも「深川監督の演出は斬新で、何が起きるのか分からない現場になっている」と口をそろえて言われていました。
岡田さんの脚本はとても余白が多く、「自分が書いたものとは違うことをやってもいいよ」と言われている気がしたので、自分なりの演出をさせていただきました。その上で、視聴者の方たちが予想できるお芝居だと、テレビから目が離れてしまうと思うんですよね。毎話ごとに「今回のお話はこの人に注目をしないといけないんだ」と思っていただくためには、それぞれのキャラクターが役者のイメージから離れたり、普通はやらないことをやらせてみる。そうすると、視聴者の集中力があがったりするんですよね。役者さんの中には「何で(その演出)?」と思った方もいるかもしれませんが、僕の中ではそういう思いがありました。
――脚本にない演出を加えられたところで、特に印象に残っているシーンはありますか?
第1話で、村人たちが集まって真空先生(高畑充希)の歓迎会をするジーンがあったと思います。あそこで全体が同じ流れになると面白くないなと思ったので、(“じじーず”の日出夫さん役の)泉谷しげるさんに「機嫌が悪く、怒っていてください」と伝えました。そうすると一つのシーンに緊張と緩和が生まれて、目が離せなくなるんですよね。たぶん、それは役者の立場からは見えないことなので、僕は監督としてそういうトラップのようなものを毎回仕掛けるようにしていました。
――役者さんもいろいろと試される現場だったということですね。
みなさん、ものすごい集中力で現場に挑んでくださっていました。ときにはほかの役者には伝えていないことをその人だけに言ったりすることもあったので、たぶんドキドキの連続だったと思います(笑)。