「漱石の作品を読むととても励まされる」
――一止は夏目漱石の影響を受けていますが、夏川さんが影響を受けた人物は誰でしょうか。
やっぱり、夏目漱石ですね。漱石という人は、世の中全体の事を心配していて、競争社会はこのままでは良くない。人を蹴倒してそれでいいわけがない"と書いています。また、「吾輩は猫である」には、"ナポレオンでもアレキサンダーでも、勝って満足した人はいないんだよ"と書かれています。
漱石が生きた時代と、現在を比べると、もっと過酷な競争社会になって、“勝てば官軍”のような風潮が強い気がします。このままではいい方向にいかないだろうなと自分が持ってた感覚にしっかりとした形を与えてくれた思想家です。ただ作品が好きなだけでなくて、漱石の作品の根底に流れている“もっと相手を思いやりましょう”“道徳はとても大切だ”という考えにとても共感します。だからこそ、漱石の作品を読むととても励まされます。
――ドラマでも、人に対する思いやりの大切さが伝わってほしいということでしょうか。
そうですね。人と人は支え合うことが一番物事を良くしてくれると思っています。特別な医療行為を行うとかいうことではなく、医者が患者を助けるだけでなく、患者も医者を助けている。支え合っている景色がうまく伝わるとうれしいですね。
――医師と作家を兼業されていて大変お忙しいと思いますが、リフレッシュ方法はありますか?
基本的には読むことと書くことです。入院患者さんもたくさんいますので、基本的には病院から1時間以上離れられないという生活です。完全な休日は年間で7日間、残りの日はすべて土日も含めて仕事になります。当直もあり、夜間の救急・急患がある場合は帰宅していても病院に行きます。大きく日常から外れて何かをする余裕がないので、私にとって読書は大事なリフレッシュ空間でしたが、書く行為も意外なほど気分転換になると、ここ10年ぐらいで実感しています。ただ、書いている時はそれなりにカリカリしていることもあるんですけど(笑)。
――どんなジャンルの本を読みますか?
大体3つぐらいの分野のものを並行して読みます。一つは、日本の古典的な純文学。今は泉鏡花の作品を読んでいます。もう一つはSF作品。そして、ものを考える時間が長いものですから哲学の分野ですね。去年は、プラトンの作品を最初からほぼ全部読みました。
――最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。
今、殺伐とした世の中になっていますが、それでは物事はうまくいかなくなると思います。お互いに思い合って、支える。時には、ある程度自分を犠牲にして誰かのために動く気持ちがあれば、きっと世の中はまともな方向へ戻ってくる。そういう思いで、私はいつも仕事をしています。この作品を通じて、誰かを支え合う人間像が伝わればうれしいです。
毎週月曜夜8:00-9:54
テレビ東京系で放送
【公式HP】https://www.tv-tokyo.co.jp/kamisama_karte/
【公式Twitter】@kamisama_karte
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