<試写室>反骨のお笑い求道者・村本大輔の目指すものとは? テレビ界を覆う“空気”の本質にも迫った意欲作「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」
テレビから消えた村本大輔の“現在”とは?
ウーマンラッシュアワーというコンビ、そして村本大輔というお笑い芸人に対して、どのようなイメージをお持ちだろうか。「ファンに手を出すゲスキャラ」、「社会問題をネタに笑いを生む希有な芸人」、「何かと炎上を繰り返す男」など、それぞれ思うことはあるだろう。
裏を返せば、それだけテレビ界に強烈なインパクトを残した芸人であり、その実力が広く認められていたとも言えるが、そんな彼をテレビで目にする機会は近年急激に減ってきている。番組内でも年ごとの番組出演本数について言及されているが、ある時期を境に状況が一変したことが数字にハッキリと表れているのはなかなかショッキングだ。
そんな「テレビから消えた」村本は、全国各地を精力的にめぐり、自ら会場を手配し“独演会”を行っていた。この番組の撮影を始めた2019年、村本は1年で600回以上のライブを行ったという。そして会場はいつでも満員の客であふれていた。村本の笑いを支持する観客は、全国にたくさんいるのだ。
ではなぜ、村本はテレビから消えてしまったのか。村本は「(テレビに出演することで)自分が犠牲になっている感じがした」と、テレビ番組の中で自身が求められる役割に対して疑問を感じていたことを明かしたが、多くの視聴者は彼が自らテレビと距離を置こうとしたとは考えていないだろう。
テレビで「映してはいけないもの」は誰が決めるのか
人気タレントがテレビに出演しなくなる、いわゆる「干される」という状況に対して、近年は多くの視聴者が過敏に反応するようになった。村本についても、彼の政治的発言や社会問題への言及に対して「何らかの“忖度”が働いている」と見る向きは少なくない。
そんな中、村本の番組出演が減ることになった“ある事件”当時のマネージャーや、村本の番組を企画していたテレビ制作会社のプロデューサーが、それぞれの立場から当時目の当たりにしたことや、感じていた「難しさ」を語っていく。そこで浮かび上がってくるのは、制作の現場に漂う“空気”の存在だ。
「コンプライアンスというより『面倒くさいから止めとこう』というのが一番大きい気がする」という制作サイドの言葉からは、そこに明確な意志が存在せず、何が問題と思っているのかさえ判然としないまま「何となく」避けられていくタレントや、うやむやになった企画が多数存在することを伺わせる。
そんな制作サイドの思いを知ってか知らずか、村本はある日のライブ終わり、カメラに対してこんなことをこぼしていた。
「『人を傷つけないお笑い』ブームみたいなこと言われてますけど、そんなの存在するわけない。食材使わずに料理するようなもんです。人間の感性なんて無限ですから、誰かは絶対(傷ついている)。(そんなことを)全員が気にし始めたら、お笑いなんて終わるんじゃないですか」
そして、番組は「テレビのルールを決めるのは誰なのか?」という素朴な疑問から、放送法そのものにも切り込んでいく。果たして法律が規定しているものは何なのか、法解釈の観点から読み解きながら、マスメディアが向き合わなければならない「表現の自由」をめぐる問題にも触れていく。
3月19日(金)夜9:00-10:00
BS12 トゥエルビにて放送
https://www.twellv.co.jp/program/documentary/bs12-sp/archive-bs12-sp/bs12-sp_06/
■【BS12スペシャル】村本大輔はなぜテレビから消えたのか?