“恥”以外のなにものでもない(笑)
――2年間の連載とそれをまとめたエッセイ本の出版を通して、自分の中で変わったこと、もしくは改めて気づいたことはありますか?
キーボードを打つのが早くなりました(笑)。あと、途中でキーボードの「M」と「N」が壊れて。そのときは大変でしたが、「N」の右上をちょっと押すとうまく打てることに気づきました。この話、今、この場では誰にも響いてないですけど、経験したことがある人なら深くうなづいてもらえると思うんですけどね(笑)。
――最後に、役者は役を演じるのが仕事で、自分を見せるわけではないと思うのですが、エッセイでは自分をさらけ出さないといけない。そこに恥ずかしさはなかったのでしょうか?
自分が書いたものを読まれて知られるということ自体は恥ずかしくないのですが、“恥”みたいなものはありますね。だって、こんなの“恥”以外のなにものでもないですから(笑)。別に人に見せる必要がないというか、自分でグダグダやっていればいいものを、わざわざ時間と労力をかけて本にする。それを1200円も出して買ってもらうなんて、“恥”でしかないですよ。だから、ほんの一瞬でもいいから1200円払ってよかったと思ってもらえるものになっていれば、意味があったのかなと思っていて。
――意味があったからこそ、7万7千部を突破しているんだと思います。
ありがたいですね。ただ、読んでくれた人にどう思ってもらいたいとか、こういう人に読んでほしいというのは全くなくて。それでも、もし興味があって、お金と時間がたまたまあるときに読んでもらえたらうれしいですし、そこに何らかの意味があったらいいなと思っています。
取材・文=馬場英美