大森「現状に満足できないって人の方が、人生がハネるって感覚がある」
――お互いの第一印象はいかがでしたか?
三谷:僕は一方的にMVとか、何ならライブもテレビ局のコネを使って「近くでやってんじゃん! しかもこの時間空いてる!」みたいな感じで観に行ったりしてたから、普通に「あ、大森靖子だ!」みたいな感じでしたね。
大森:(笑)。
三谷:テレビ局の打ち合わせで、打ち合わせって大して説明することがないときもあったりするんですよ。その時もそうだったんですけど、無駄にめっちゃしゃべってた気がしますね、緊張して。いらないこともしゃべってましたね。「ライブで大森さんの後ろで(夫の)ピエール中野さんがドラムたたいてるのを見て、サザンオールスターズの逆版だと思いました」みたいなことを無駄にしゃべってましたね(笑)。
大森:言ってた(笑)。
――大森さんは、三谷さんと最初に会った時の印象はどうでしたか?
大森:“テレビ局にたまにいる変な人”だなって。ちゃんと仕事してる人がいっぱいいて、そんなに変な人っていないじゃないですか。だけど、たまに何を言ってもちょっと掛け違って、勝手にもっと面白く解釈して、勝手にもっと膨らませて「やばいっすね!」「いいっすね!」って言ってくれる人が知り合いに1人いるんですよ。で、(三谷氏も)「このパターンね」って思いました(笑)。「あ、本当の面白い人だ」って。
――それで今回「街録ch」の主題歌オファーがあって、動画内で三谷さんからは「誰の人生でもすてきに見えるような曲を」とリクエストがあったと思うんですが、それを聞いてどんなイメージを持ちましたか?
大森:今まで「街録ch」を見てきて、みんながすごくカッコいいなって自分には映っていたんですよ。人生いろんなことがあって大変だし、そのいろんなことって社会がそうであるとか、本人の意思に関係なかったりするけど、今生きていてそれを語れるって、サバイブした人しかできないことだから、カッコいいことじゃないですか。
それを“社会の闇”って言われることはすごい気に入らないし、自分はカッコいいって思ってて、三谷君もカッコよく演出しているはずで。それを“闇”とか“暗い”とか、「日本はこういうところがあってダメだ」っていうふうに受け取るのは解像度が足りないなって思う部分で、そこから生き抜いたこととか、向き合い続けたこととか、サバイブってやっぱり向き合い続けて「こっちは違うから、あっちに行かなきゃ」ってやらないと、人生って次の大変な局面に遭わないと思うんですよ。
その環境に諦めて「これでいいや」ってやってると、面白いことって起こらないし。大変なことも起こるかもしれないけど、現状に満足できないって人の方が、人生がハネるって感覚があって、それをちゃんと残す番組ってすごく面白いと思うし、自分もそういうものにしか興味がないって歌を書き続けているところでは、そういう人たちと出会うようにして歌を書き続けてるところがあるので、そこをきれいにじゃないですけど、良く見せられるように描ければいいなと思って曲を作りました。
――出来上がった曲を聞いた時の感想はいかがだったでしょうか。
三谷:めっちゃいい曲だなって思ったのと、本当にピッタリで「合うだろうなぁ」って。最初にギターの弾き語りのデモ音源を頂いたんですけど、それをスマホに入れてロケに行く時に毎日聴いてましたね。これが編曲されたりして、もっとパワーアップしていくんだろうなって、完成するのが楽しみでしたね。
「街録ch」に出てくる人たちが聴いたら心を動かされるだろうなっていうような歌詞がいっぱいちりばめられていて、それこそ曲が出来上がった時、取材した彫刻家の人がたまたま大森さんのファンで、何の気なしに「聞いてみます?」って言ったんですよ。発表前の曲なんで、本当はダメですけどね(笑)。
大森:(笑)。
三谷:でも、聴いてもらったら1フレーズ目でもう泣いていて、すごい破壊力だなと思って。“生きることは優しさ”っていうのがAメロのスタートなんですけど、それを聞いた瞬間にポロッと泣いていて、それでもう確信しましたね、「街録ch」に合っている曲だなって。
5月19日(水)デジタルリリース
大森靖子『PERSONA #1』
7月7日(水)発売
YouTube「街録ch-あなたの人生、教えてください-」
【URL】https://www.youtube.com/channel/UCB4nWNauim-qxiaDOcH0dLA