作品賞は「俺の家の話」 衝撃の結末は「最初から決めていました」(磯山晶CP)【インタビュー前編】
西田敏行の演技に「すごい人間ドラマを撮っているんだ」
――磯山さんはこのドラマを「長瀬さんの最高傑作にしたい」という思いがあったそうですが、どのあたりでそれが達成できそうだという手応えを感じましたか?
磯山:第1話の終わり、寿一が寿三郎の面倒を見ると決めて家に戻り、入浴を介助しながら「なんでか分かるか? そういうもんだからだよ」と言ったときの顔。そう言われた西田さんの顔を見て、もう普通に泣いてしまいました。台本で読む時とは違う、実際に演技で見て、改めてこれはすごい人間ドラマを撮っているんだと思いました。
――そのときから、最終話の衝撃的な展開は決まっていたのですか?
磯山:そうですね。最初から決めて企画書にも書いていました。最終話は映画「シックス・センス」にしようという話になり、寿一本人は気付いてないとか、そういう仕掛けをやってみました。でも、よく考えたら映画「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」で、既に亡霊のぶっさん(岡田准一)の姿が“お父さんだけはバイバイを言ったから見えない”というのをやっていましたね。
――最終話は長瀬さんへのエールとして描いたのでしょうか。
磯山:それは宮藤さんにしか分からないですけど、私と宮藤さんの間では、第1話で寿一が「親父に褒められたことがない」と言っていたので、最終話は褒める、それも最上級の褒め言葉を考えないとだめだねという話をしました。そして、台本に「人間家宝にはなれたな」というセリフが出てきて、このためにずっと「人間国宝」と言い続けたのか!と。おそらく実際には宮藤さんが後から考えたと思うんですけど(笑)、素晴らしかったです。
――長瀬さんは、この結末を変えなくていいと言ったそうですね。
磯山:結末に関してはそう言ってくれました。ひとつだけ最初の予定から変わったのは、寿一の最後の試合。大きな団体から呼ばれて、後楽園ホールなどで“ブリザード寿”として出そうと思っていたんですけど、長瀬くんは、再デビュー後の“スーパー世阿弥マシン”じゃなきゃ嫌だと。確かに、なぜブリザード寿として呼ばれるのかを考えると謎だなと思って、あの設定になりました。
――そのように、長瀬さんの意見がストーリーに反映されたところも多いのでしょうか?
磯山:いえ、長瀬くんは何事もあまり直接NGは言わないです。台本が面白かったという感想も、最初のリモート会議で、宮藤さん、金子文紀監督、私と4人でしゃべったときしか言ってない。第6話の台本が出来たときは“潤 沢”のライブシーンがあったので、念のため「歌ってくれる?」と聞いて、OKでした。何かに拒否反応があるなら変えないといけないなとは思っていましたが、あまりなかったですね。
※インタビュー後編は5月19日(水)17時配信予定。
(取材・文=小田慶子)
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