2021年5月19日、星野源と新垣結衣が結婚することが発表された。2016年の本放送時に社会現象と呼べるほどのブームとなった「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)で共演した2人が結婚することは、“逃げ恥婚”と大きな話題になった。奇しくも、2020年の5月19日は特別編集版となる再放送「逃げるは恥だが役に立つムズキュン!特別編」の第1回が放送された日。今回はその「ー特別編」放送時に、“逃げ恥が愛された理由”について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が振り返った記事を再掲載する。(以下、2020年5月19日配信記事に追記したものです)
登場人物の個性・環境を穏やかに受け止めて…
この3年半(※2020年時)、何度も再放送されていて見るたびにほっこりする。「逃げ恥」こと「逃げるは恥だが役に立つ」は近年のヒットドラマの筆頭格である。
第1話の視聴率は10.2%(※以下、視聴率はビデオリサーチ調べ・関東地区)と平凡だったが回を増すごとに注目されていき、最終回(11話)は視聴率20.8%と盛り上がった。なぜ、「逃げ恥」は多くの人たちに愛されるのか。
この数年、「多様性」という言葉が社会ですっかり定着したが、「逃げ恥」は極めて「多様性」を意識した作品で、各々の登場人物の個性や置かれた環境を否定することなく、できる限り穏やかに優しく受け止めて肯定していこうとする気遣いの流れのとば口であったように思う。
主人公・森山みくり(新垣結衣)は大学院まで出ながら就職難で派遣社員としてその能力を持て余していたところ、派遣切りに遭う。まずこれがとても現代的な設定である。
だが、みくりは家事代行サービスという新たな仕事につく。雇用者である津崎平匡(ひらまさ/星野源)は、優秀なシステムエンジニアで、独身生活を謳歌しているように見えて、36歳にして性体験がなく、それを「プロの独身」と言い換えて自分を肯定している。これまた極めて現代的な設定だった。
働く場所のない人物と、結婚適齢期というような世の中の勝手なルールに当てはまらない人物、現代に多く存在する人たちの代表のようなみくりと平匡。やがてふたりは、「家事をやってもらうこと」と「対価を得る」というお互いのメリットのため合理的な「契約結婚」をする。それによって能力を最大限に生かし対価を得ることと、結婚しているという世間体を得ることができた。
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