レビュー
グルメにミステリーが絡む本作。といっても、事件の犯人を突き止めるわけではない。三舟シェフが厨房で料理をしながら、客の言動から悩みや苦しみを読み取り、絶品料理とお節介(?)優しさ(?)で彼らの問題を解きほぐしていく。確かに、店員さんに顔を覚えられていたら嬉しくなるが、この三舟シェフの記憶力はすさまじい。記憶力はいいシェフの条件だそうだ。
そんな三舟シェフたちが作る料理はどれもおいしそうで、美しく撮影されている。「ロニョン・ド・ヴォー」「ナバランダニョー」「プティ・サレ・オ・ランティーユ」などフレンチに詳しくないが、画面から香り立つような品々に思わずお腹が鳴ってしまった。また、音楽は実際にレストラン内で流れているかのような、居心地のよいBGMが使用されていたのも印象的だ。
派手なサスペンス展開はなく、ゆったりとした雰囲気で温かい。物語だけでなく、『パ・マル』の従業員・西島秀俊、濱田岳、神尾佑、石井杏奈らが作り出す家族のような空気感にも癒やされる。劇中で三舟シェフが悩める客たちに出す「ヴァン・ショー(ホットワイン)」を、同じように飲みながらドラマを楽しむのもいいだろう。そして新型コロナの影響で外食を控える状況が続いているが、自粛が緩和されたら『パ・マル』のようなすてきなレストランを探したい。