ロックスターとしては、「真面目じゃねーよ」と言いたい(笑)
――「ロックは弱い人間が鳴らす音楽だ」と常々おっしゃっていますが、本書を読んで、山中さんにとって「もがく」ことが音楽を生み出すパワーになっているのでは……と思いました。
もがいたり、誰かの絶望を背負うことが、作品が生まれる時の喜びや、誰かがその作品を聴いて笑ってくれる喜びにつながっているんですよね……。人生って8割しんどいでしょ? だから2割の楽しいことを見つけると達成感があるし、喜びもある。しんどい人生で良かったなと思っています。
――こうやってお話を聞いて、思いました。優しいし、真面目ですよね?
そうですか? ロックスターとしては、「真面目じゃねーよ」と言いたい(笑)。でもこれが自分だから、この性格で人が救えるならそれを受け入れて、それを活かして何ができるかを考えた方がいいと思うようになりました。
「綺麗事」って言われるかもしれないけれど、綺麗事にはめちゃめちゃ説得力がある
――山中さんにとって曲を作ることは誰かに伝えること、自分を吐き出すこと、どちらの側面が大きいのでしょうか。
どっちもですね。でも、「自分の経験が誰かの人生に作用する」ということをすごく考えています。さっき話題に出た優しさや真面目さを持っている人って、苦しんでる人に多い気がするんです。自分が苦しんでいるからこそ、人の痛みを知ることができる。同じ想いを抱える人たちに寄り添うことが、自分の一番の役割だと感じているんです。
だから歌詞には自分の体験やその時の思いをなるべく正直に書いて、「僕はこうやって乗り越えたよ」ってメッセージを自分が確認しながら伝えています。そうすると書き終えた時に自分で「これで正解だ」って思えるし、出したあとも「誰かのためになってよかった」と思えるから。
――でも、「人の人生に作用する」って、ちょっと怖いことでもありますよね。
そうですね。以前、東京の交差点の真ん中で、40歳ぐらいの方に「拓也さんの MCを聞いて転職を決意しました。新しい人生に踏み出せて、今、人生がめちゃめちゃ楽しいです」って言われたんです。あまりにもびっくりして「ありがとうございます」しか言えなかったけれど、そういう大きな決断のきっかけを作ってしまっているんですよね。だからこそ、自分が書く言葉には責任を持ちたいと思ったんです。
「綺麗事やん」って言われるかもしれないけれど、綺麗事にはめちゃめちゃ説得力があるし、その説得力をいかに自分の人生を通して伝えていくかが大事。言葉ひとつに対する重みって、そういう経験から変わりました。言葉の力も強くなったけれど、その分、責任感も増した気はしています。
――今回は音楽ではなく書籍という形で言葉を残されていますが、音楽との違いとは?
歌詞や歌は、歌う声や譜割りで伝えられる部分も多いのですが、本は声が聴こえない分、相手に想像させなきゃいけない。だから自分の人間性や人物像が、より正確に伝わるように書くことが一番苦労したところです。
「他がままに生かされて」
1900円(税別)/発売中
KADOKAWA
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■リリース情報
Digital Single「Red Criminal」
6月30日(水)リリース
詳細はhttps://theoralcigarettes.com/feature/digitalsingle_redcriminal
■THE ORAL CIGARETTES公式サイト
https://theoralcigarettes.com/