俳優・タレントの草なぎ剛が6月30日、東京會舘で行われた第47回放送文化基金賞の贈呈式に出席。自身が演技賞を受賞した宮城発地域ドラマ「ペペロンチーノ」(NHK BSプレミアムほか)と、被災地への思いを語った。
「震災で妻も店も失い、深い葛藤を抱えながらも、その痛みとともに生きていく人間の奥深さを絶妙に表現した」と紹介され、「ありがとうございます。本当に素晴らしい賞を頂きまして」とあいさつ。
「あの…僕は本当に何にもしてないんですけど、プロデューサーの青木(一徳)さんと監督の丸山(拓也)さんと、脚本の一色(伸幸)さんが、厳しい目でずっと現場にいたので、『早くホテル帰りたい…帰りたいな』と思ってやっただけなんですけど」と一瞬おどけてみせた草なぎ。
続けて「実際に被災地での撮影だったので、去年の暮れ、寒い時期でした。本当に地元の方にたくさんの炊き出しをしていただいて、栄養をつけて、スタッフ・キャスト寒い撮影を乗り切れたと思います」と感謝を述べた。
さらに、「被災された方は、今も心の傷が癒えてない方もたくさんいると思うのですが、そういう方に少しでも寄り添えるドラマにしたいと思って、私たち一同、それに力を注ぎました。今、この…テレビかな? やってるのかなこれは? 見られている東北の方、これからも一緒に、一歩、一歩と、前に進めていきましょう」と共に歩むことを力強く誓い、「本当に今日はありがとうございました」と締めくくった。
「ペペロンチーノ」は、同賞の番組部門<テレビドラマ番組>で最優秀賞、脚本賞も受賞し、丸山D、一色氏らも登壇して謝辞を述べた。
それぞれの選考理由は以下のとおり。
番組部門<テレビドラマ番組>最優秀賞 宮城発地域ドラマ 「ペペロンチーノ」
震災10年の節目に、被災者復興という眼鏡をはずして、現地の人たちの視点から今を生きるとはどういうことかを描くドラマとして高く評価された。シンプルだからこそ旨い味を出すのが難しいペペロンチーノに託しながら、失われたもののあまりにも大きなつらさを胸にそれでも強くシンプルな日常を送っていくことの大切さを描いたドラマ性が高く評価された。草なぎ剛のひたむきさや、吉田羊の不思議な存在感が強いインパクトを残すドラマとなった。
脚本賞 一色伸幸氏
地元の人の視線に沿って震災10年の節目を描き、復興という枠から離れて、失ったものと今の両方を見事にすくい取った点が高く評価された。
演技賞 草なぎ剛
深い葛藤を抱えながらもストイックに、スタイリッシュに前を向く姿勢を示し得るその演技の深さが評価された。シンプルに、しかし奥深くという作品のテーマを絶妙に表現した。
◆取材・文=坂戸希和美