「美しい人」は弾き語り調の楽曲で、この曲がアルバムの最後に収められることで一つ一つの命が肯定されているような印象も受ける。
荒谷「確かに、この曲では結構肯定してますよね。でも自分としては肯定しようって思ったわけじゃなくて、本来僕たちはいつか消えてなくなるぐらい自然なものとして存在しているんじゃないかって感覚があって。
元々人間は自然から生まれて最後はそこに帰っていくわけだけど、人間という存在自体が粒になって消えていくような感覚を対話形式で表したかったんです。
『美しく煌めく暗がり』って歌詞があって、『どういうこと?』って思うかもしれないですけど、『闇燦々』の歌詞もそういうイメージを持ちながら書いていったんです」
そう話すように、対極的な言葉や描写を混在させる荒谷の作詞スタイルがアルバムを通して突き詰められている。
荒谷「絶望と希望だったり、同時に存在しないだろうっていうものが共存しているのが僕としてはしっくりくるんですよね。だから、その感覚を歌詞で表現したいというのはずっとあります。対極にあるものがすーっと重なった瞬間がとても穏やかで美しい時間だと思っているので」
日本を代表するプロデューサー二人との制作は、とても大きな財産となったという。
斉藤「僕はこれまで割とひらめき重視で音を入れていたんですけど、冨田さんも亀田さんも、一つ一つ入れている音にちゃんと意味があって。すごくロジカルなアプローチをやられているところを目の当たりにして、すごく勉強になりましたね」
野元「僕はまず、リハーサルスタジオの広さに驚きました(笑)。あと、エンジニアの方もいろいろとすごくて。
ドラムのハイハットの上に薄いティッシュを乗せたりとか、スポンジを置いてみたりとか。楽器の周りに防音マットとかじゃなくて、柄物の布みたいなのを何枚か吊るしていたり。
そうやって、僕がこれまで見たことがないような音を良くするための仕掛けがたくさんあって。それに、気を紛らわせるためにお尻からシャボン玉が出るキャラクター人形とか、子供心をくすぐるようなものが置いてあるんです。
大御所の方ってもっとお堅い感じでやっているのかと勝手に思ってたんですけど、気持ちを柔らかくするための工夫がさまざまなところに詰まっていて。すごく良いマッサージチェアがあったり(笑)」
荒谷「のもっちゃん(野元)、マッサージチェアによく座っとったもんな(笑)」
最後に、本作を作ったことで生まれた今後のビジョンを訊いた。
田中「次は、温度感のある生音と電子楽器の打ち込みが混ざり合った音を突き詰めたいなっていうのが個人的にはあります。
質感的には相反するものですけど、荒ちゃんの言う希望と絶望が共存しているようなイメージが音でも作れると説得力が増すんじゃないかって思っています。あとやっぱり荒ちゃんはとても素敵な歌や曲を作るので、よりポップなものにしてもっと聴いてもらいたいと思っていますね」
取材・文=小松香里
ワーナーミュージック・ジャパン 3080円(通常盤)
収録曲●ごきげんよう さようなら/闇燦々/The Buzz Café/浪漫/愛し私/夢幻/恋文/はっぴいめりいくりすます – at the haruyoshi/Take 5/sofu/beautiful Day to Die/哀してる/美しい人
ヨナヲ=荒谷翔大(Vo)、斉藤雄哉(Gt)、田中慧(Ba)、野元喬文(Dr)。福岡で結成し、2018年に自主制作EPをリリース。2019年11にメジャーデビュー。以降ミニアルバム『LOBSTER』、フルアルバム『明日は当然来ないでしょ』をリリース。8/22(日)にはFUJI ROCK FESTIVAL’21に出演する
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