「東京リベンジャーズ」の勢いが止まらない。4月から放送されているアニメは各種配信サイトのランキングで上位に位置し、北村匠海主演の実写映画は興収42億円、観客動員数300万人突破と今年の実写作品ではトップレベルの大ヒットとなった。また8月には2.5次元舞台も上演され好評を博している。まさに全方位的なヒットを実現している「東リべ」だが、これは作品自体のパワーに加え、アニメ・実写映画・舞台をほぼ同時に展開した、集中的なメディアミックスというスタイルに要因があるのではないだろうか。「東京リベンジャーズ」のヒットを考察してみよう。
ヤンキー×タイムリープの異色作「東京リベンジャーズ」
原作「東京卍リベンジャーズ」は2017年3月から週刊少年マガジンで連載されている少年漫画。冴えないフリーターである主人公の花垣武道は、ある日中学生の頃の恋人・橘日向が暴走族集団「東京卍會」に殺されたことを知る。その直後、自分も死に瀕した際に、偶然中学生時代と現在を行き来できるタイムリープ能力を入手。武道は、日向の死の元凶となる「東京卍會」に入って運命を変えようとする中で、さまざまな不良たちと出会い、戦いながら成長していく。
この序盤の展開からわかるように、ヤンキー×タイムリープという設定が新しく、東京卍會総長・佐野万次郎(マイキー)や、その右腕の龍宮寺堅(ドラケン)を始めとする、多種多様な魅力を持つ熱いキャラクターもファンを引きつけている。
またマイキーが仲間を鼓舞するときの名ゼリフ「日和ってる奴いる?いねえよなぁ!」がSNSを中心にインターネット・ミーム化したり、海外では特攻服が目新しいためか「東京卍會」のコスプレイヤーが出現したりと、現在は“ネタ”的な意味でも幅広い層に受け入れられている。
アニメ化で人気加速し、実写映画で一般層にまで広がった
原作は元々漫画好きの間では知られ、第44回講談社漫画賞の受賞など評価されていたが、そこからさらに今のようなトレンド的タイトルとなったきっかけは、最初のメディアミックスであるアニメ化だ。
原作の累計発行部数を見ると、連載開始から4年経った2021年3月末時点では1000万部だった。しかし4月にアニメの放送が始まると、6月に2000万部を突破とわずか2ヶ月で倍増。その勢いは留まらず、8月時点では3500万部を超えている(公式Twitterより)。つまり、アニメ放送開始から数ヶ月で、4年間の累計部数の倍以上の販売結果を叩き出しているのだ。
またTwitter解析ツールで「東リべ」「東京卍リベンジャーズ」「東リべ」といったワードの入ったツイート数の推移を調べると、人気拡大の様子がより顕著にわかる。今年3月時点では1日あたり平均3000件程度だったが、4月は1万件程度と3倍以上に。その後も増加し続けるが、実写映画公開日となる7月9日には過去最多の9万件弱と爆発的な伸びを見せ、それ以降は5万件程度で推移している。(※ソーシャルインサイトによる編集部調査)
これらの数字を見ると、コミックスを購入するようなコアファンが4月のアニメ化をきっかけに大幅に増加し、実写映画の公開によりアニメを観ない層にもしっかりとリーチしたことがうかがえる。またこの短期間での集中展開が、多くの人にとって「東リベ」を「流行っていた作品」ではなく「今流行っている作品」という認識にしたということは想像に難くない。
ポニーキャニオン