ラブコメ作品において、ヒロインと結ばれなかった男性はどうしてこんなにも魅力的に映るのだろう。最近だと、「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS系)の中沢(間宮祥太朗)や、「着飾る恋には理由があって」(TBS系)の葉山(向井理)など、数々の“選ばれなかった男たち”が、視聴者のハートを掴んできた。そして、現在大きな話題を集めているのが、「彼女はキレイだった」(毎週火曜 夜9:00-9:54、フジテレビ系)で、赤楚衛二が演じている樋口だ。(以下、ネタバレがあります)
樋口は、ヒロイン・愛(小芝風花)が働く雑誌編集部の先輩。愛が垢抜ける前から想いを寄せていて、困っているといつも助けてくれるヒーローのような存在だ。思いやりがあって、男らしくて……恋敵の宗介(中島健人)にまで優しいのだから、完璧である。第9話では、物語の鍵を握る謎の小説家・楠瀬凛の正体が、樋口であることも判明。まさに、裏の主人公と言ってもいいほどの存在感を発揮している。
だが、愛に選ばれたのは宗介だった。ヒロインが17年越しの初恋を実らせたのに、どこか苦しくなってしまうのは、樋口の存在があるから。振られてしまっても、「最高の友達でいたい」と明るく言う姿に、胸が締め付けられるのだ。
樋口というキャラクターは、分かりやすく見えて「掴めない」という点が鍵になっている。演じる赤楚は、さまざまな表情を操らなければならない。自分のことを見てくれない愛に対して、「ただのヤキモチ。もっと、ジャクソン(※愛のあだ名)のなかに俺がいればいいのに」と拗ねて口を尖らせたかと思えば、「(宗介のところに)行くな」と低いトーンで引き留めたり。どれが本当の彼なのか?と見ているこちらまで惑わされる。だが、それがまったく計算に見えないのは赤楚の演技力の賜物だろう。
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