北海道在住のシンガーソングライター・Chimaが、10月27日にミニアルバム『nest』をリリースした。
同作には現在放送中のTVアニメ「月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)」(毎週日曜深夜1:35-2:05ほか、テレビ東京ほか)のエンディング主題歌「ありふれたいつか」や、上田麗奈に提供した楽曲「たより」のセルフカバー「たより (弾き語りVer.)」など、全6曲を収録。
WEBザテレビジョンではChimaにインタビューを行い、そのミニアルバム収録曲や、2020年12月にデビュー10周年を迎えてのこれまでの振り返り、さらに次の10年に向けた展望などを聞いた。
この1本の線って何なんだろうっていうのが私の持った印象でした
――まずは、今回のミニアルバムを『nest』というタイトルにした理由から伺えればと思います。
曲は毎回原作を読んで書かせていただいてるんですけど、今回の曲を並べた時に曲自体のカラーもアレンジも、歌い方とかも違ったりして、結構カラフルな感じがして。だけど、共通して「ちょっと力を抜いてもらえたらな」とか、「聴いている間は現実逃避してもらえたらいいな」っていう気持ちがあって、それが鳥の巣みたいなイメージがしたんです。
あと、鳥っていろんな場所に巣を作るじゃないですか。だから“ここ”っていう1つの場よりは、各地の皆さんにそれぞれの場所でそれぞれの巣にしてもらう、そんなアルバムになればいいなって思いました。
――今作で初収録となる「ありふれたいつか」はTVアニメ「月とライカと吸血姫」のエンディング主題歌になっていますが、曲を作る際にイメージしたことなどはありますか?
原作を3日くらいかけてじっくり読ませていただきました。イリナという吸血姫が主人公なんですけど、珍しい種族の吸血姫だからというだけで(イリナに対する)偏見や差別があって。
2人の人が立ってる土の上に1本の線があって、その1本の線があることによって、本当はどちらも同じなのに、片方の人にとってはありふれた何でもない日常が、もう片方の人にとっては願ってもいけないことになってしまう。この1本の線って何なんだろうっていうのが私の持った印象でした。
でもイリナは1人の少年と出会うことで、それを願ってもいいというか、それを望んでもいいっていう希望が生まれて。2人で空を見上げたらそこには何の線もない宇宙が広がっていて。
あと、イリナには「宇宙に行く」っていうすごくストレートな、言葉にしたら簡単になってしまうものを、本気で思って言葉にできる強さと孤独みたいなものを感じたので、歌詞にそういうところも入れられたらなと思って書きました。
音的にはちょっとエレクトロなんですけど、舞台設定としては1960年代のロシアをモチーフにしている話なので、シンセの音を使ってはいるんですけど、普通だったら打ち込みの音にするところに生音を切り刻んで使ったりしています。遊びました(笑)。
――他の収録曲についても、改めて順番にお聞きしたいと思います。
「はじまりのしるし」が1曲目で、TVアニメ「ゼロから始める魔法の書」のエンディング主題歌です。「ゼロから始める魔法の書」は主人公が2人いるんですけど、私の感覚では正義が何個もある中で、お互いの正義の真意を知らず、ただ自分の正義以外のものは悪だと思い込んでいて。
でもそれは誰のせいでもなくて、ただそこに生まれ育っただけというか。だから、その正義が重なるところだけでも、一緒に生きていけたらいいよねって言ってる感じがしたので、そういう歌詞にしました。
あと、主人公たちは旅をしているので、旅人らしいお洋服とか、牧歌的な空の感じとか、そういうビジュアルもコードや爽やかさで表現できたらいいなと思って作りました。
2曲目が「ありふれたいつか」で、3曲目が「lien(リアン)」ですね。「lien」はアプリゲーム「最果てのバベル」のエンディングテーマで、ゲーム音楽はこれが初めてでした。
エンディングで流れると聞いて、今までは主人公の目線に立っていたんですけど、ゲームをしている感覚を思い浮かべた時に、RPGでどんどん進んでいくプレイヤーの人は、その世界に入り込んでゲームと自分との絆をどんどん深めていく感覚があるんじゃないかなって思って、そこからもっとゲームが日常になっていくイメージを持ちました。
「lien」っていうのはフランス語で「絆」なんですけど、ストーリー的にも絆というものをすごく大事にしていたからそういう意識もしつつ、最初は鳥かごみたいな中にいて、暗いところから明るく広いところに行くイメージで、私にとっては初めての曲調で、アレンジもピアノとすごくゴージャスなストリングスを付けていただきました。歌い方もゲームが終わった後のフィナーレ感を意識しました。