「櫻井孝宏のザクライ」と約12年ぶりに再会…目指していた“不良中年”には『多少“リーゼント感”があるかな(笑)』<Interview後編>
櫻井孝宏が目指した“不良中年”
――今回の書籍には約12年前に書かれた「櫻井孝宏のザクライ」(以下、「ザクライ」)も収録されていますが、改めて読み返しましたか?
編集担当の川戸さんが見つけてきて、「何てことをするんだ」と思ったんですけれど、自分は(「ザクライ」のことを)忘れていたんです。あれはエッセイというよりはコラムで、(今の)4分の1ページくらいで、かつ同じように声優さんが好きなことをそれぞれ書いていたので、わりと無責任に書いているんですよね。
それが見て取れるので、「ネタがなかったのかな?」「2回で終わらせようと思ったものが3回、4回になっているな」とか、そういうのもありありと分かるんです。けれど、全く覚えていないものもあって、それは逆に新鮮に読めました。
あと、(今回のエッセイの)答え合わせになっているところもあったので、この本に「ザクライ」が載ることによって、奥行きが出てしまったなと。でも、私としても自分の輪郭がちょっとハッキリしたようで、面白いなと思いました。
――「ザクライ」の「近未来予想図」で、櫻井さんは『目指せ不良中年』と仰っていました。不良中年にはなれましたか?
ああいうの恥ずかしいですね(笑)。不良をどう解釈するかだと思うんですけれど、執筆当時の不良って少しワイルドで、男くさくて、女の子にちょっとうっとりされちゃうようなイメージだったんです。
でも、意外となれているかな? この本の内容が過激とは思わないし、書いてはいけないようなことを書いているわけでもないんですけれど、結構正直に、赤裸々に書いているところに関してはちょっと不良っぽいんじゃないかな?と思いますね。
例えば「すごい」「かっこいい」と思われたいのであれば、もう少しかっこつけた文章を書くと思うんです。でも、それは似合わないですし、書いていても「違う!」ってなると思うので、その結果あの文体になっていったのだと思います。
あと、スーツでいる仕事ではないので、いわゆる世間一般の価値体系とはズレたところで生きていますし、それプラスアルファ「言わなくていいじゃん」「書かなくていいじゃん」というところを書いているのは、多少“リーゼント感”があるかな(笑)。
――今回のエッセイで櫻井さんの中で満足度が高い、面白いものが書けたなどの手応えを感じたエピソードはありますか?
正解不正解が分からない中でも「Final Fantasy(ファイナルファンタジー)」は書きやすかったです。(※本誌『終わらないモンスター狩り』より)
その後は、もう少し自分に沿った今までの人生や考えを知りたいということで、お題をもらって書いたのですが、徐々に分からなくなってきちゃって…「大丈夫かな?」と思っているものほど褒めてくれたりするんです。そのへんのピントが私はまだ合っていないようです。
なので、手応えを感じたものって言われると…ただ、書き下ろしは死にそうでした(笑)。地元に行ったことを書くことになった時は、ちょっとエモい巡りになると思っていたんですけれど、一向に覚えていなくて「これは弱ったぞ」という感じでした。
初めはそれなりに美しく、自分の心象風景をうまいこと靄の様に書こうと思っていたんですけれど、途中で立ち行かなくなりました。なので、今のところ気持ちよさ、快感みたいなものはなくて、逆に頭を悩ませたものの方が強烈に覚えています。