脚本に書いてある温かさをそのまま届けるためには、純粋さが大事
岡山の和菓子店に生まれた安子は、14歳で地元名家の御曹司で、英語が堪能な大学生の稔(松村北斗)と出会い、その運命が動きだす。
「稔さんに対する思いは、出会ったときは、憧れが90%くらい。英語やコーヒーなど、安子の知らない世界を次々と教えてくれる稔さんとの距離が近づくにつれ、憧れが恋心に変わり、1週目の終わり頃には、恋心が70%くらいになっている気がします。それを象徴する第5回(11月5日放送)の自転車のシーンには、鳥肌が立ちました。(脚本家の)藤本有紀さんって、天才ですよね…。安子のお父さん役の甲本雅裕さん、お母さん役の西田尚美さんも、ここを“最高のシーン”に挙げてくださったので、ぜひ見てほしいです」
上白石自身も、安子の初恋を大事に演じたという。
「脚本に書いてある温かさをそのまま届けるためには、純粋さが大事だと思って。監督にも『安子は真っすぐに捉えて、真っすぐに話す』ということを何度も言われました。2人は純粋だし、英語という共通の趣味がつなぐ間柄だから、品の良さや、賢さみたいなところも感じられるといいなと思ったのですが、松村さんが、その雰囲気を全てお持ちだったので、私は純粋に付いて行ったという感じです」
初恋のアイコンともいえる稔役の松村は上白石を「頼もしい作品の軸」と評していたが、上白石から見た松村とは?
「不思議と人が引き寄せられていく、磁力のある方で(笑)。冷静を保っていて、周りにのまれることはない印象なのに、人が来ることは拒まない。特に関西のスタッフさんがこぞっていじりに行っていました(笑)。投げられたボールをめちゃくちゃ面白く返すというやりとりがラジオを聴いているみたいで、私にはすごく楽しい時間でした。撮影がSixTONESさんのツアーと同時進行だったのですが、『昨日、本当にアリーナの大きなステージに立っていた人なのかな?』と思えるくらい、ナチュラルで飾らない、不思議な方でした」
取材・文=坂本ゆかり
NHK出版
発売日: 2021/10/25