「アメリカ国際フィルム・ビデオ祭」ゴールドカメラ賞、「ニューヨークフェスティバル」ファイナリストに輝くなど、反響を集めたドキュメンタリー番組「私は白鳥」(2019年、チューリップテレビ)に、2年以上の追加取材を加えた映画「私は白鳥」が、11月20日(土)に富山・ほとり座にて先行公開、11月27日(土)には東京・ユーロスペース、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開される。
ナレーションを務めるのは女優・天海祐希。自身を「白鳥」と自称するほど白鳥に見せられ、傷ついた一羽の白鳥を見守り続ける澤江弘一さんの物語に、近づきすぎず離れすぎない見事な距離感で寄り添う。人は自然にどこまで介入するべきなのか。葛藤しながらも白鳥に全てを捧げる澤江さんと白鳥たちの心温まる本作の魅力を、天海と槇谷茂博監督に聞いた。
最初は「周りにはあまりいないタイプの方」だと思った。でも…
――今回、なぜ天海さんをナレーションに起用したのでしょうか。
槇谷茂博監督:白鳥の美しさ、傷ついた白鳥のたくましく生きる強さを表現できる方、澤江さんの生き方に共感していただける方なのではないかなと思ったからです。富山にゆかりがあるということも聞いていました。
――天海さんはオファーを受けた時、どう感じましたか?
天海祐希:「ちょっと変わったおじさんなんですけれど、とにかく見てください」と言われたんです。「変わっている人」という言い方は、個人的にすごく嫌なんです。だけど、確かに最初は「周りにはあまりいないタイプの方」だと思いました。
でも見ているうちに、澤江さんの純粋さや白鳥に対する思いは、人間誰しもが心の中心にあるものなんではないかと思うようになりました。澤江さんにとってはその対象が白鳥だっただけ。それでだんだんと「変わっている人」には見えなくなっていきました。「なんて純粋に白鳥と向き合っているんだろう」って。
澤江さんの笑顔であるとか、行動・言動がキラキラと美しいものに感じられました。自分が理解しにくい人のことを「変わっている」と捉えてしまうことは誰にでもあるけれど、そうとは絶対に言えないなと思って、澤江さんを応援したくなりました。
――それで、オファーを受けることにしたんですね。
天海:「私に何ができるだろうか」と思いました。他の方がこの作品のナレーションをしたものを映画館で見たら、私はどう思うだろうか、と思ったんです。きっと悔しいだろうなと思って、「ぜひ、やらせてください」と言いました。
それが私の大きな基準なんです。お仕事をいただいた時、それを違う女優さんがやっているのを見て「悔しい」と思わないだろうか、と自問自答するんです。ちょっとでもそう思ったら、やる。「私は白鳥」は、違う人の声では見たくなかったんです。
もちろん、やらなかったお仕事の全部が悔しくなかったわけじゃないんですよ。スケジュールが合わなかったり、いろいろな条件でできなかったこともあるけど。
TCエンタテインメント
宝塚クリエイティブアーツ
発売日: 2006/02/10