芸人がゆえの葛藤「結婚したら売れなくなるのかな」、萩本欽一からの言葉で「考え方が変わった」
――久本さんは長年、独身であることを笑いのネタにしてきました。それゆえに結婚することで、「ネタが減ってしまうのではないか、面白くなくなってしまうのではないか」という不安はありませんでしたか。
そういう意味では、結婚することへの不安は正直ありましたね。私が若い頃は、お仕事を続けながら結婚や出産、子育てをする女の芸人さんはほとんどいませんでした。特に私みたいなキャラは周りから「結婚したら売れなくなるよ」とめちゃくちゃ言われ続けてきたから、「結婚したら仕事がなくなるのかな…」「幸せになったら人気がなくなるのかな…」という不安や葛藤がいつも心のどこかにありました。
でも時代は変わって、今や、結婚して子どもを産んだ女芸人さんがバラエティに出続けるのは当たり前。むしろ、妻や母となった経験を活かした方面での仕事をしている方もいらっしゃいますし。
――たしかにそうですね。
50歳ぐらいときに欽ちゃん(萩本欽一)に言われた言葉で、ガラッと考え方が変わったことがあって。欽ちゃんに「私が結婚したら、やっぱり仕事がなくなりますかね?」と聞いたら、「マチャミはもういいんじゃない?だって、みんながあんたの結婚を待ってるんだもの」とおっしゃっていただいたんですよ。
それに、先日テリー伊藤さんとお会いした時にも「結婚しなよ。ネタ増えるぞ」「結婚したら考え方も変わるから、面白いんじゃない」って言われて。いや、ほんとだなと。今までずっと「おひとりさまネタ」でやってきて、自分でも驚くぐらい話のネタがあるんですけど、結婚したら物事への見方や考え方、身の回りに起こる出来事が変わるわけじゃないですか。でも相手が誰もいない。マジでいない(笑)。
久本雅美流の"人生を共にする仲間”の作り方「友情は努力」
――なるほど(笑)。そんな久本さんですが、芸能活動に臨むうえでのモチベーションは何でしょうか。
私にとっては劇団(WAHAHA本舗)の存在が大きくて、「劇団を存続させたい」「団員やスタッフの生活を守りたい」という思いがひとつの原動力になっています。あともうひとつは、こうやって自分がやりたいお仕事をさせていただけるようになった過程で支えてくれた、大勢の人たちに恩返しをしたいという気持ちもあります。その恩返しは何かといえば、やっぱり、私が元気に活躍し続けることだと思うんです。
当然、年齢や体力の問題、時代の流れもあるから、ずっとテレビで何十本もレギュラーをやることは難しい。だけど、貧乏な時や悩んだ時に支え、本気で応援してくれた人たちに喜んでもらうために、舞台やテレビに出続けたいです。そのための戦いだと思っています。やっぱり自分のことだけを考えていたら行き詰まりますからね。
――久本さんは劇団の方やプライベートのお友だちなど、還暦を過ぎても多くの親しい人に囲まれている印象を受けます。中高年になっても孤独にならず、友人・仲間とともにいる生活を送る秘訣は何だと思いますか。
これはもう「努力」です。年齢を重ねるていくと、友だちは待っていてはできません。あと、友だち関係を継続する努力も大切です。年賀状を出すとか暑中見舞いを出すとか何でもいいから、何か事あるごとに「あなたのことを思っていますよ」と伝える努力は、絶対に必要。友情ってある意味、努力なんですよ。
――最後に、久本さんが今後の人生でやりたいことをお聞かせください。
いや~、何だろう。私、貪欲だからなぁ(笑)。60代になったら、体力も気力も若い時と比べたら落ちていくわけですけど、これからも舞台やテレビといったエンタメの世界で頑張り続けたいし、気力・体力を懸けた戦いをしていきたいです。「生涯現役」が私の夢。これからも続いていく芸能活動の延長線上で、また新しいものに出会うことへの楽しみが大きいです。
文・撮影=こじへい
著者:久本雅美
出版社:幻冬舎
発売日:11月25日
価格:1,430円
“ひとり”元気に走り続けて、芸歴40年。「人生に1ミリたりとも後悔がない」という久本雅美が、いくつになっても楽しく生き抜くためのヒントをまとめた。「たけしさんからもらった仕事の教え」「“老害にならない旬の人への乗っかり術”」など63歳ならではの仕事への向き合い方から、「親のための結婚はしない」「結婚してないからこそ、希望が続く」など恋愛への本音まで、笑えてパワフル、それでいて温かな“マチャミ節”82編を収録。さらに、“未婚のプロ”代表、作家のジェーン・スー、“熟年婚”を果たした女優の高橋ひとみとの爆笑対談を収録。