コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、かどなしまるさんの「人生が一度めちゃめちゃになったアルコール依存症OLの話」。にほんブログ村の「コミックエッセイ」ランキングで上位ランクインし話題を集め、2021年10月29日に待望の書籍化を果たした。Amazonのカスタマーレビューでは、「自分以外にもこんなに同じことで悩んでいる人がいるんだと思わせてくれた漫画」「弱いのは自分だけじゃない、頑張ろうと思えました」といった声が寄せられ高評価を得ている。本記事では、作者のかどなしまるさんにインタビューを行い、アルコール依存症との向き合い方やお酒にまつわるエピソードについて、赤裸々に語ってもらった。
シラフではとても生きられない。“出勤前のスト缶”が当たり前の日常に
作者のかどなしまるさんは、とあるメーカーの事務職として働いていた、ごくごく普通のOL。残業時間は月20時間ほど。いわゆる“ブラック企業”と呼ばれるような就労環境ではなかったが、職場の人間関係に大きな問題があったのだ。
相手の人格を否定して怒鳴り散らす“人格デストロイヤー”の課長、パワハラで労働基準監督署に通報された過去を持つ“メンタルクラッシャー”のお局さん、気に入らない人の物を破壊しまくる“備品ブレーカー”のギャル先輩。職場はいつもギスギスとした雰囲気で居心地が悪く、上司や先輩に話しかけることはもちろん、席を立つことや挨拶をすることにさえ、恐怖やプレッシャーを感じるように…。そして、人間関係のストレスから解放されたいとの一心から、出勤前に一杯のカルーアミルクに手を出してしまったことが、アルコール依存症の入り口に。「こんなことはやめなければ」と思う気持ちとは裏腹に、状況は日に日に悪化していく。アルコールを飲まないと出勤できないようになり、朝起きたら高アルコール度数の缶チューハイを1本。家にお酒がない時は、出勤途中に購入して駅のトイレで2本。飲酒のハードルはどんどん下がり、宅配便を受け取る時、美容へに行く時ですら、アルコールがないと不安を感じるように…。飲酒が原因となり、会社でトラブルを起こしてしまったことから、退職して依存症と向き合い始めたかどなしまるさんだったが、依存症を克服するのは決して容易なことではなかったのだ。
アルコール依存症は、多かれ少なかれお酒をたしなむ人であれば、誰でも陥る可能性のある心の病気といえるだろう。身近に潜む依存症の怖さ、苦悩しながらも病気を克服しようともがく姿を、生々しい体験談と柔らかいイラストとのギャップで描く本作に対し、「(アルコール依存症を知ってもらうために)多くの人に読んでもらいたい」「弱く汚い部分をさらけ出した本書はとても貴重」といった、レビューが寄せられている。
※飲酒の際は、食物をとりながら、自身にとって適切な量をゆっくりとお楽しみください。自分で飲酒の量やタイミングをコントロールできず、お悩みの場合は、専門の医療機関を受診してください。
※20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。
「お酒はリモコンのスキップボタン」。作者にとっての“お酒”とは?
――ご自身がアルコール依存症であると受け入れられるようになるまでにとても苦労されていた印象です。依存症であると認めるに至った決め手などはありましたか?
まず自分への「変な厳しさ」が依存症だと受け入れるのに苦労した要因の一つにありました。散々お酒に頼って物事から逃げてきたにもかかわらず「依存症」のせいにする自分が許せなかったんです。飲む選択をあの時した結果が現状で全部性格の問題として向き合うべきだそう思っていました。免罪符にしてやってきたことを正当化しそうな弱さもあったのでその愚かさが怖かったんですよね。依存症と認めることも許さずに進もうとしてもすぐにけつまづいたというのもありますし、なにより認める決め手となった妹の言葉が作中に出てきますのでぜひ読んでみてください。
――アルコールに依存していた時の自分に声をかけられるとしたら、どんな言葉を届けたいですか?
当時はとにかく何をするにもお酒との関係を清算してからではないと手をつけてはいけないと思い込んでいました。正社員を目指すのも、友達と再び笑い合うのも、恋人を作るのも…つまり人生を前向きに楽しむには断酒してスタートラインに戻るものだと。しかし、それだとハードルが高くて…ずいぶん後回しにしてしまいました。お酒と向き合うのと明るい未来の種をまいていくのは同時進行でいいのだとのちのち思ったのですがもっと早い段階で自分自身に言ってあげたかったですね。
――かどなしまるさんにとって“お酒”とはどんな存在でしょうか。過去(依存していた当時)と現在の視点からお答えください。
「社会で生きていく為に必要な相棒」、「人間関係を円滑にしてくれる潤滑油」、「自分を動かしてくれる燃料」、「陰気くさい自分から少し明るい自分に選手交代してくれる」といった感じでしょうか。自画自賛になってしまうのですが、言い得て妙だったのは「リモコンのスキップボタン」です。その場しのぎだとしても飲めば自分を楽にしてくれる裏切らない存在でしたね。自分よりなにより「酔った自分」の方が信じられました。要は酒ありきでしか考えられませんでした。
現在ではざっくり言うと「たまにの晩御飯のお供」もしくは「楽しい場でのいろどり」。
それ以上にしてはいけないという意味も含めてこんな感じです。もっとしっかり語らないといけない気もしますが簡単にここは留めておきます。
――作中ではアルコールに依存していた時のさまざまな出来事が描かれていますが、ご自身が一番「やばい」と思ったエピソードはなんですか?
私はお酒を飲んでも顔色が変わることがあまりないのですが、体調によっては赤くなることがあります。ある朝、いつものように飲酒し出勤しようとしたら顔が赤らんでいました。鏡越しにその様な自分をとらえた瞬間、あまりにも間抜けな顏をしていたものですから無性に腹が立ちました。もちろん自分自身にです。酔っていた衝動もあり気付いたら顔面をカミソリでピッピッと、かっさばいていました。少し我にかえると顔中に数本の傷跡が走しり血が流れていました。「あ、ラッキー」と思いました。顔に傷がついていることは訝しげに見られるかもしれないけどお酒で赤らんだことがバレない、バレなければまた明日から飲んで行ける。そんな意味でのラッキーです。何よりもお酒が優先だった自分にぞっとするエピソードですね。
――連載中、また書籍化にあたって多くの反響のコメントが寄せられたかと思います。特に印象に残っている者があればお教えください。
これは友人が寄せてくれた漫画のレビューですが、「アルコール依存症の人は、飲むこと以外何もしていない(したくないと思っている)、というイメージを勝手に抱いていました。けれど作者は『仕事に行かなきゃ』『なんとかしたい』からお酒を飲むという、イメージと真逆の動機だったことがまず衝撃的でした」。これは自分には無い視点で1番新鮮でした。
私はアルコール依存症になりましたが、病気としての知識をちゃんと勉強し理解してるとは到底言えません。なので、もちろん医学的な観点から語れることはないのですが前記した友人の感想にアルコール依存症の多様性に気付きました。私の中のアルコール依存症像は入退院を繰り返し、消毒液からでさえアルコールを摂取しようとするみたいな…。私みたいなのはアルコール依存症の浅瀬でちゃぷちゃぷしてただけ?と量も驚くほど飲めるわけでもなく場面的にあるいは精神的に依存していた身としては思ってしまうことがありました。しかし、今ではさまざまな陥り方があり「私ならではの視点」で語れることがあっていいのだと思っています。
――最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございます。(作品を読んでくださった方は)一人の平凡なOLがアルコールに溺れていく姿はどう映りましたか?「怖い」「アルコール依存症って意外と身近さがある」「愚かだ」「イライラする」はたまた「共感する」…色々な意見が生まれる題材です。一人のアルコール依存症の人生・向き合い方を描いたのですから、どの感想も私はあってしかるべきだと思います。「私の視点」から捉えたアルコール依存症をこうして表現し形にしていただいたことに深く感謝いたします。
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