野村萬斎が蜂須賀にとっての「未知子」を分析!
――長く続く作品に参加することへの難しさなどを感じることはありましたか?
クランクインするにあたって、「ドクターX」シリーズを全て拝見し、非常に完成されたチームで、キャストもスタッフも動いているのだなというのが分かりました。完成されているチームに、新しく参加することで自分のペースがどう乗れるのか、少し戸惑った部分はありました。
「最強の敵」という触れ込みもあり、(未知子に)立ちはだかるようなこわもてな一面もあり、やなやつというイメージもあって、視聴者は多少なりとも「何こいつ」と“うざがっていた”のではないかという気がしていますが、それはそれでこちらの狙い通りでした。
それ(蜂須賀の存在や行動に違和感を抱く視聴者)をうまく引き止めつつ、さらに物語のペースに(自分自身も視聴者も)うまく乗せていくというのはなかなか辛抱のいる作業だったかなと思います。
――これまで印象的だったシーンやせりふを教えてください。
蛭間院長代理を演じる西田さんとのシーンは面白かったです。特に一対一で行うシーンはなんとなく、キツネとタヌキの化かし合いのようでとても楽しかったです。どちらがタヌキで、どちらがキツネかは見たままな気がしますが(笑)。
蛭間も蜂須賀もお互い腹の内を見せないで、相手の嫌だなと思う部分をちくりちくりと刺し合うことが多かった。蛭間と蜂須賀のように西田さんと私も演じるキャラクーに寄せて、あまり腹の内を全て見せ合うようなことはしなかったので、「どんな感じでくるのかな」「どんな球がくるのかな」とワクワクしながら臨みました。
大勢の方がいる会議のシーンは、(一対一のシーンに比べて)権力を持つ蜂須賀の方が蛭間を押すようなシーンが多いのですが、西田さんと2人きりのシーンでは駆け引きめいたお芝居ができるので、スリリングな面白さを感じました。
――蜂須賀にとって大門未知子はどのような存在だとお感じですか?
「100%の医療を実現する」という信念を貫こうとする蜂須賀の前にやっと現れた「理想」の人物。みんな忘れてしまっているかと思うんですが、彼(蜂須賀)は元・外科医だったのです(笑)。
どうして内科に転じたか、外科でどういう成績を残したかは分かりませんが、外科の限界をいち早く知った人だからこそ、それを否定し、一種の悲しさも感じています。
そんな彼が否定していたものを覆す存在が大門未知子という「失敗しない医者」。まさに蜂須賀が理想としている「100%(=患者を救うことができる)の医者」が存在しているということが、諦めてしまった彼の(外科医としての)価値観をもう一度、目覚めさせたという気がしています。
医療上のパートナーシップなのか、恋愛としてのパートナーシップなのかは分かりませんが、蜂須賀にとって未知子は居心地のいい存在であることは間違いないと思います。2人がどういった関係に落ち着くのか、蜂須賀の信念はどうなってしまうのか、そこも併せて最終話を楽しんでいただければと思います。