今回の演出は、読売演劇大賞最優秀演出賞や文化庁芸術祭大賞など、数々の賞を受賞してきた上村聡史。岡田は「ブラッケン・ムーア 〜荒地の亡霊〜」以来、2度目のタッグとなる。
「以前も、このシアタークリエで上演した作品でお世話になっているので、僕自身も、俳優としての力量も、全部上村さんにはバレてます(笑)。なので、稽古初日から全開でしたし、“僕がやりたいトム”と“上村さんが求めているトム”を一生懸命すり合わせながらここまで来られました。明日、初日で皆さんに見てもらえたら、トムもまた違う階段を登れるんじゃないかなって思います」と、上村と意見を交わしながら作り上げてきた“トム”という役への自信をうかがわせた。
トムは主人公でありながら、劇の進行役として“語り部”的な役割もある。「切り替えがなかなか出来なかったりすると、厳しい演出家なので(笑)、たくさん怒られながら1カ月半やってきました。なので、一生懸命トムという役を全うしたいと思います」と話したあと、「上村さんにどういうところを怒られたんですか?」と質問され、「ごめんなさい!怒られてはないです(笑)。お互いの人柄もわかっているので、気を遣わずに上村さんとは『ガラスの動物園』という作品、トムという役と向き合っていけたかなと思います」と訂正。
そして、「ひとりで喋り続ける部分は、説明を皆様に理解していただくのと当時に、楽しんでいただく時間でもあります。お客様と一緒にこの空間を共有できるように稽古中から意識してきました」と、“語り部”の部分でのこだわりも明かした。
“舞台”という場所についての思いを聞かれると、「難しいんですけど、僕の初舞台が蜷川幸雄さんの作品で、蜷川さんに『立ち続けなさい』と言われたので、今も立ち続けています。自分自身、舞台に対して敬意を持っていますし、自分を試す場所でもあると思っています。みんなで作ってきた作品を100%の状態で見てもらうために稽古をしてきましたし、その時間も割と好きなんです(笑)」と舞台での作品づくりの楽しさを語った。
最後は、「不朽の名作と言われた『ガラスの動物園』を楽しみに待っている方がたくさんいらっしゃると思います。僕たち4人で作る『ガラスの動物園』はとても優しい空間になると思っています。もちろん悲劇的なことはありますが、希望が持てる作品なので、たくさんの方に観ていただきたいです。よろしくお願いします」という意気込みとメッセージで締め括った。
舞台「ガラスの動物園」は12月12日(日)から30日(木)まで、東京・シアタークリエで上演。2022年1月には福岡・博多座、愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでの上演が予定されている。
「ガラスの動物園」あらすじ
物語の舞台は1930年代のアメリカ・セントルイス。トム・ウィングフィールドは、母親のアマンダと姉のローラと一緒に暮らしている。アマンダは過去の華やかな日々にしがみつき、極度に内気なローラはガラス細工の動物たちが唯一の心の拠り所。口うるさいアマンダと、単調な倉庫での仕事に嫌気がさしているトムは、なんとかして閉塞感のある日常から抜け出そうと考えている。
◆取材・文=田中隆信