歌っている私の姿が見えるような歌い方をするようにしています
――アニメのタイアップだからこそ、普段の楽曲と違う部分もありそうです。
そうですね。普段歌っている水瀬いのりの楽曲は、自分が好きな楽曲や挑戦してみたい楽曲なんです。一方、タイアップだと作品の顔や色を自分なりに解釈して表現しています。それにアニソン特有の速いテンポやたたみ掛けるようなフレーズがあるのも、ノンタイアップ楽曲との大きな違いです。
――声の出し方などにも違いがあったりも?
今回で言えば、歌い方と言うよりも楽曲のキーに工夫がされています。当初、現状のキーより半音か全音上で作っていただいていたんです。それで歌ってみたところ明るすぎる感じがしたのと、自分らしく歌うことが難しいキーだと感じてしまって、レコーディングの際に相談してキーを下げていただきました。これまで楽曲に対して自分の歌い方や表現を寄せていたのですが、今は成長していく中で見つけた自分らしい歌い方や表現の仕方を確立することができました。今回キーを下げることで、楽曲を自分らしさに寄せることができたと思っています。
――水瀬さん「らしさ」とは、具体的にどんなことなのでしょうか。
言葉にするのが難しいんですけど、「人間味を感じる歌」です。歌の中でもニュアンスや感情表現を乗せているんですが、音階に縛られるとどうしても平坦になりがちなんですよね。そこでブレスや語気の強弱で工夫をして、歌っている私の姿が見えるような歌い方をするようにしています。
――「REAL-EYES」にも、その「らしさ」は詰まっている、と。
1コーラス目のAメロ〈ひとつ 霧を抜けて〉や〈ひどく 裏切られて 嫌気が差す運命ーさだめー〉なんかは分かりやすいかもしれません。「こんなに頑張っているのになんで救われないんだ」みたいな、ちょっとワナワナした気持ちを乗せて歌っています。これもいろんなテイクを試していて、もっと諦めてグレちゃったテンションのものもあれば、意外とサクッと歌っているものもありました。でも選ばれたのは歯を食いしばっているような、ダークな部分が見えるもの。気に入っているテイクだったので良かったです。
――1コーラス目のAメロだとアニメでも流れる部分ですね。「現実主義勇者の王国再建記」で水瀬さんが演じているのは主人公の婚約者ですが、「REAL-EYES」はソーマを歌った楽曲です。どのような心情で歌われているのでしょうか?
「REAL-EYES」は、すごく歌いやすかったです。自分が演じているキャラクターの目線が歌の中にあると、キャラに寄りすぎてキャラクターソングっぽくなってしまうこともあるのですが、今回はソーマを客観的な視点で捉えることができたので、水瀬いのりとしてしっかり歌えました。役と程よい距離がある方がやりやすいですね。