新聞記者、官僚、大学生…それぞれの役作り
ーー役を演じるうえで大事にしたこと、意識したことを教えていただけますか。
米倉:私は“我慢すること”を意識していました。というのも、普段から外国の方と接することが多いからかもしれませんが、つい手を動かしながら話してしまうんです。でもそれを封印しなければ松田という役は成り立たないと思ったので、手を動かしたい衝動を我慢するといいうことを意識して演じていました。
横浜:事前に“こう演じよう”と決めずに、ワンシーンワンシーン相手の言葉や起こる出来事に影響されて、亮の心が揺れ動いていく感じを表現したかったので、“素直でいる”ことを大事にしながら演じていました。さまざまなことを経験していく中で、少しずつ変化していく亮の姿に若い方々が共感してくださったらいいなと思っています。
綾野:自分の精神状態を追体験しない、ということでした。「こうすれば良かった」ということに気付かないように。何故なら村上は“たられば”を言える立場ではないからです。人はなんでもない会話の中で“たられば”を考えることでポジティブになれたりもするので、「あのときこうだったら」という感情を完全に捨てて生きることは過酷でした。
ーー官僚、新聞記者、大学生という役柄上、お三方がそろうのはワンシーンのみでしたが、だからこそみなさんのそのワンシーンにかける熱量が画面から伝わってきました。
綾野:ありがとうございます。ただ、公文書改ざんの事件が起こってからこの3人が会うまでに何人もの人を介さなければいけないというのは、直接的には描かれていませんが、これもひとつの問題提起かもしれません。もっと早く3人が顔を突き合わせて話をする機会があったならば、解決できることが他にもあったかもしれない。もちろん、だからこそ守られている部分もある。ある種の不毛さはなくならない。