震災を機にフリーの道へ。理詰めで取り組むことで芽生えた希望
――新人時代に大変だったことは何ですか?
やはり漢字が読めないということでしょうか。言い訳になってしまうんですけど、数字が好きでしたし、特に微分積分が大好きで、解いていて気づいたら3時間とか経ってしまうくらい。その中で、活字を読むという習慣はほとんどなかったんですよね。結局、“初鳴き(※新人アナウンサーが初めてアナウンスすること)”も同期で一番遅かったんです。それから、ほとんど番組を見たことがなかったということもあって、とにかくNHKの番組やテイスト、そしてNHKのアナウンサーの仕事を学ぶということに必死に取り組みました。
――そこから約9年間、NHKで働き、2012年4月からフリーに転身されますが、きっかけはどんなものでしたか?
私はバラエティー番組をやらせていただくことが多かったのですが、本格的にアナウンサーを目指しはじめた頃から、報道番組のメインの女性キャスター・アナウンサーに憧れていたんです。特にNHKに入ってからその気持ちが強くなりましたし、帯で情報とか報道番組のメインを女性で張れる、安藤優子さんのような存在になりたい、と。そういう思いをずっと持ち続けて、20年ぐらい経ちましたが(笑)、それは今も変わっていません。今でこそ、若いアナウンサーが「ニュースウォッチ9」などを担当していますが、私がいた頃は、女性は、経験を積んで40歳以上になって、視聴者の皆さんから信頼を得ている方でないと帯の報道番組は担当できない、というような風潮が何となくあったんです。だから「私も頑張らなきゃ」と思った30歳ぐらいのときに、東日本大震災が起きたんです。あの光景を見たときに、「人生って突然終わってしまうことがあるんだ、これは他人事ではないんだ」と痛感して。それで、これから10年間、ここで頑張ることを目標にするのか、ここを出て今すぐにでもできるかもしれないというチャンスに向かっていくのか、と考えたときに、「明日生きているか分からない。だから今だ」と思ったのが一番大きな理由ですね。
――震災のとき、神田さんはどんな関わり方をしていたのでしょうか?
発生当時、教育テレビ(※現在はNHK Eテレ)で24時間安否情報というのを流していたんです。視聴者の方がNHKのサイトにアクセスをして家族の方などにメッセージを送り、それを発信し続けるというもので、それを約1時間交代でひたすら読むんです。「何々ちゃんへ。生きてます。連絡ください」「何々くん、元気ですか。連絡ください」「何々さん、どこにいるんですか。連絡ください」…。どこにいるかは分からないですけど、「とにかく聞いていてくれ!」と思いながら。それを読んでいたとき、すごく重みを感じて。自分が生きていることは当たり前じゃないんだ、って。それで人生の考え方がだいぶ変わりました。
――フリーとして活動し始めてみると、やはり大きな違いは感じましたか?
感じましたね。アナウンサーの仕事であれば、ある程度自分でいろいろシミュレーションしたり、勉強したり、計算のもとでやっていくことができると思うんですよ。でも、バラエティー番組にゲストで呼ばれるという訓練は受けてこなかったものですから、どうしていいか分からなくて、うまくできない時期が続きました。どうしてもアナウンサーの気持ちしか分からないんですね。アナウンサーの方の進行の邪魔にならないような存在でいなきゃ、っていう発想しかなかったんですよ。そうすると、黙ることしかできなくて、もうまったくハマらなくて…。
――そんな中でターニングポイントになったお仕事は?
一番印象に残っているのは初めて「ワイドナショー」(フジテレビ系)に出させていただいた(2018年11月18日放送)ときです。まず、こんなすごい番組に呼んでいただいて大丈夫なのであろうか、とすごく考えたんです。NHKのアナウンサーには、コメンテーターの要素なんか一切ないんですよ。ニュースは原稿を読んで、伝えるのが仕事なので、ニュースや芸能界で起こったことに対して自分の考えを言うという思考回路がなかったんですが、それを仕事とするときがきてしまった。だから、すごく時間をかけて準備しまして。しゃべりたいコメントも付箋に50枚ぐらい書いて、それを持っていきましたら、皆さんが笑いに変えてくださった部分もありつつ、何とか放送できないというレベルではなかったんですね(笑)。バラエティー番組はいくら準備をしても、皆さんの流れで、自分の想像なんか超えてしまって対応できなくなってしまうんですけど(笑)、「ワイドナショー」では「神田さんどう思いますか?」と聞かれて、自分の考えを述べる時間をいただけた。「こういう番組なら、しっかり準備すれば、私もできるかもしれない!」と初めて希望みたいなものを感じましたね。
――どちらかというと理系的な考え方なのでしょうか。
そうかもしれません。理屈で理解できないと思考が止まって、何もできなくなっちゃうんです。そんなに柔軟な頭じゃないんです。
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