電子書籍解禁のきっかけは「いきつけの本屋さんが閉店してしまったこと」
――漫画界において、先日浦沢先生が電子書籍を解禁されたのは大きなトピックでした。解禁の決め手となったポイントはどこにあったのでしょうか?
一番大きかったのが、いきつけの本屋さんが閉店してしまったことです。行き帰りにちょっと寄ったりしていた本屋さんに僕の本を置いてもらっていることにうれしさを感じていたのですが、それがなくなったとき、「僕の本はどこに置けばいいんだ」という感覚があって。もう意地をはっていても仕方がないんだと思いました。
(電子書籍解禁にあたり、)僕は(作品の冒頭に掲載する)「見開き読み推奨!マーク」というものを作りました。電子書籍をスマホで読まれると、見開きで見せたいページが片ページだけになってしまい、我々の演出が全く効かなくなってしまうんです。それこそ、今回出演される渡辺さんの作品は、自転車がバーンと走る躍動を見開きの単位で描いていらっしゃるのですが、漫画のあるべき姿を取られてるんじゃないかと感じました。
縦スクロールの電子書籍などもありますが、まだ過渡期の文化だろうなと。エンターテインメントとして成熟させていくには、まだまだ試行錯誤しなくてはいけないと思います。
――先生の作品はすでにたくさんの方が読まれていますが、電子書籍を解禁したことで、さらに若い世代にも先生の漫画が広がっていくかと思います。
これまで紙で漫画を読まれていた年齢層の方たちは僕のことをご存知かもしれませんが、若い人たちにとっては、僕はむしろ“新しく発見した新人”のように見えているかもしれません。よろしくお願いします!(笑)
電子書籍には絶版がないので、山ほどある過去の名作を若い人たちにどんどん読んでいただけるようになるというのは、それだけでも非常に価値のあることです。一方、あまりにもズラーっと名作が並んでしまっているので、何を読んでいいかわからず途方に暮れることもあるかもしれない。それを今後、どうやって解決するべきなんだろうと考えています。