与えられた型に、無理して自分をはめこんでいく子にはなってほしくない
ただし、白倉Pは価値観を子どもたちに押し付けたいわけではない。「小さいお子さんは、大人のいうことを見聞きしながら、自らの性別を意識していきます。その自然な成長をあまりぐちゃぐちゃにしてはいけない。『女性はピンク』という固定観念を覆すのは現代の一手段であり、着る服や与えられるおもちゃから男の子/女の子というジェンダーロールに縛られるのではなく、“自分はどういう人間なのか”を、自分で見つけて選んでいくことが自然な形だと思うんです。与えられた型に自分を無理してはめ込むのではなく、自分らしくのびのびと育ってほしい」
これを実現するためにメインライターに抜擢されたのが「鳥人戦隊ジェットマン」(1991年)、「仮面ライダーアギト」(2001年)、「仮面ライダーキバ」(2008年)などを手掛けた脚本家・井上敏樹だ。善悪の二元論に囚われず、滅びの美学を持ち、キャッチーな台詞、独特のキャラ造形、子ども向けであっても容赦しない物語展開など、業界でも“暴れん坊”で通っている。
「今回のモチーフは『桃太郎』です。キャラクター同士の関係性がわかりやすいということで選ばれたモチーフですが、かといって桃太郎の意見に、お供たちがよしわかったと賛同するとは限らない。人間ですから。キャラクターをそれぞれ魅力的な人間として描いてくださるのが井上先生。また既成概念を崩したくてウズウズされているタイプですので、5人揃って一つの心、スーパー戦隊ってこういうものだよということに縛られない。戦隊という集団を描く上で、全体主義的な感覚をお子さんたちに植え付けてはいけないと思っています。いかなるときでも自由や多様性が最も大事。そのためにも井上先生にはどんどん暴れてもらいたいですね(笑)」
ちなみに前作『~ゼンカイジャー』主人公の五色田介人(駒木根葵汰)も登場するが、世界観はリンクしていない。彼はどんな役割を担うのか、またなぜ仲間の中に、「桃太郎」では本来敵であるはずのオニがいるのか、これらも物語の鍵となるだろう。「本作は大人の方が面白いと思える作品かもしれません。シリーズ46作目、新たなスタートラインに立ったスーパー戦隊をぜひ見てください。スーパー戦隊の見方がガラッと変わるはずですよ」
取材・文/衣輪晋一(メディア研究家)
暴太郎戦隊ドンブラザーズ
毎週日曜朝9:30~ テレビ朝日系にて放送中第1話はYouTube/TELASA/東映特撮ファンクラブにて無料配信中
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