“朝ドラ”こと連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。現在は3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)編を放送中。劇中の時代は90年代に入り、1999年には人類が滅びるというノストラダムスの大予言をひなたは信じている。それまでに五十嵐(本郷奏多)と結婚したいと願っていたひなただったが、人類滅亡の前に五十嵐から別れを切り出された。突然のことに視聴者も驚いたようで、SNSには驚きの声が多く寄せられていた。オリジナル作品ならではの衝撃展開となった2人の破局と、ひなたと当然結婚すると思わせる名演技だった本郷奏多について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。(以下、朝ドラ過去作のネタバレが含まれます)
2度目の恋は成就するハズが…
五十嵐ぃ〜〜(涙)。いや、びっくりした。ひなたと五十嵐はこのまま結婚して貧しいながらも楽しい家庭を築くと思い込んでいた。というのは朝ドラのヒロインの初恋は実らず、2度目の恋でうまくいくことが多いからだ。
過去を振り返ると、ひなたの母るい(深津絵里)は大阪に出てきてすぐ片桐(風間俊介)といい感じになりかけたがうまくいかず、そのあと錠一郎(オダギリジョー)と恋に発展した。
祖母・安子(上白石萌音)は稔(松村北斗)が初恋で、結婚までしたものの彼は戦死したので初恋が実らない説は誤りではないだろう。ロバート(村雨辰剛)は2度目の恋にカウントされるかが未だにはっきりしていないため視聴者としてはモヤモヤしているが、安子には稔さん一筋であってほしい。
ひなたは子供時代、ビリーという外国の少年にほのかな恋ごころを抱いたもののあっさり破れていたので五十嵐がふたりめ。だからきっとうまくいくとすっかり油断していた。
第90回で、錠一郎が夢破れてもるいと幸せな結婚をしていまに至っている話を聞いた五十嵐には、ぜひとも踏みとどまってほしかった。
第92回でひなたが7年(結婚を)待たされたすえ振られたとはっきり口にするまでは、正直、ワンチャンあるんじゃないかと思って観ていた。もちろんその前に第91回で時間が経過したのち撮影所に五十嵐の姿がなかったり、ひなたが結婚資金の貯金で英会話学校に行ったり、言葉に出さなくても五十嵐はもういないことはわかるのだが…。
あんなに喧嘩するほど仲のいい、息の合ったふたりが微笑ましかったからこそすごく寂しい。本郷奏多が時代劇一筋のちょっと屈折した、でも純真な五十嵐を好演していたから余計に。
オリジナルストーリーならではの面白さ
「カムカム」はオリジナルストーリーで先の展開がまったくわからない。その面白さが最大限に発揮されたのがひなたと五十嵐の関係だったように思う。
同じくオリジナルの朝ドラ「半分、青い。」(2018年度前期)ではヒロイン鈴愛(永野芽郁)が一度結婚して離婚して最終的には幼馴染でソウルメイトの律(佐藤健)と結ばれたが、その展開は最初から薄々わかっていた。
いつふたりはお互いの気持に素直になるのだろうということをやきもき見守ることを楽しむドラマだった。つまり、すれ違いのドラマ「君の名は」方式である。