心が動いたシーンは…「阿部さんの愛を感じた瞬間だった」
阿部:うちのおやじはエンジニアだったんだけど、すごく寡黙な父親で、どっちかというと温和でおとなしい印象なんです。そんな父親がある日、ものすごい剣幕で僕を怒ったんですね。もちろん当時小学校3年生の悪ガキだった僕が悪いんですが、そのときにおやじは怒ると本当に怖いんだと気付き、そこからおやじを見る目が変わりました(笑)。
北村:最近よく思うのは、親と子という関係性はいくつになっても変わらないんだなと。僕も24歳になって、既に成人した大人ではあるのですが、たまに実家に帰ると今でも心配されます。それはヤスとアキラの親子関係においても同じだと思いました。
――では、親子を演じている中で最も心が動いたシーンは?
阿部:アキラがおやじに、初めて大声で反発するシーンがある。あそこは演じていても、寂しい気持ちになりました。もちろんそれは、アキラが成長している証しではあるのですが、父親としては複雑で。でも、あれでヤスも父親として成長できたと思うし、本物の親子になれたような感覚がありました。
北村:僕はアキラが結婚しようと思っている由美(杏)を地元に連れて帰るシーンです。最初こそ、由美のことを認めないようなそぶりを見せますが、それがヤスの幼なじみの照雲(安田顕)さんの小芝居によって、ようやく自分の気持ちを口にしていく。あのシーンは現場でもそうでしたが、改めて完成した作品を見ても本当に泣けました。ヤスとしてだけでなく、この作品を率いてくださった阿部さんの愛を感じた瞬間でした。
◆取材・文=馬場英美
公開中
出演:阿部寛
北村匠海、杏、安田顕、大島優子
濱田岳、宇梶剛士、尾美としのり、吉岡睦雄、宇野祥平、木竜麻生、井之脇海、田辺桃子
田中哲司、豊原功補、嶋田久作、村上淳
麿赤兒、麻生久美子/薬師丸ひろ子
原作:重松清「とんび」(角川文庫刊)
監督:瀬々敬久
脚本:港岳彦
音楽:村松崇継
主題歌:ゆず「風信子」
配給:KADOKAWA、イオンエンターテイメント
公式サイト:movies.kadokawa.co.jp/tonbi/
(C)2022『とんび』製作委員会