芸能人が俳句や生け花といった課題に挑戦し、その作品をその道のプロが厳しく審査する“才能査定ランキング番組”「プレバト!!」(TBS系)。世の中であまり知られていない事実や雑学を“賢人”の林修に出題する、知的バラエティー「林先生が驚く初耳学!」(TBS系)。テレビの総世帯視聴率が低下している中にあって、いずれも高い視聴率を誇るこの2番組を総合演出として手掛けているのが毎日放送の水野雅之氏だ。番組誕生のきっかけや番組の好調をキープし続けられる秘訣を語ってもらった。
配属から1カ月後にはチーフディレクターを任されていました
――初めてテレビマンとして携わった番組を教えてください。
「関西で今も放送されている、お昼の生放送の情報番組『ちちんぷいぷい』('99年~MBS)です。僕は入社してから6年間、東京支社の営業局でCM枠をスポンサーに買ってもらう仕事をしていました。制作デビューは28歳だったので、その遅れを取り戻すべく、プロデューサーからビシビシしごかれました。
VTRを製作することになったのは配属された初日。『東京から大阪に引っ越してきて驚いたこと』を1週間後にVTRしてオンエアするようにいきなり言われました。しかもADもリサーチャーも作家もいない中、たった一人で、撮影や編集のノウハウも何もないまま、ディレクターとしてロケVTRを作ったんです。結果的に、その一発目のVが認めてもらえて、ADを経験することなく、僕の制作人生はディレクターからスタート。とはいえ、そこから1年間は超ハードな実践教育(笑)。毎週欠かさず出し続けたVTRは、ネタを探すのも自分一人でしたし、ロケ先の仕込みも自分でした。しかも…」
――いきなりの実践教育はまだあったんですか?
「このスパルタ教育はロケ以外にもあって(笑)、配属から1カ月後には生放送を仕切るチーフディレクターを任されました。プロデューサーは、僕がどこでギブアップするかを確かめていたんだと思います(笑)。『ちちんぷいぷい』って、4時間もある生放送番組なのに、台本らしい台本がないんですよ。どこでCMに行くかも決まっていない。チーフディレクターの大きな役割のひとつは、CMへ行くために、出演者のみなさんのトークを強制終了するタイミングを判断すること。初日は完全に圧倒されて、最初のCMボタンを押すまでにいきなり10分押しという事態になりました(笑)」
――「10分押し」というのは、どのくらい大変なことなんですか?
「生放送なんで、致命的ですね(笑)。でも素人にはムリな話ですよ。だって、桂ざこばさんや、なるみさんのような、しゃべりのプロのトークを、関西人じゃない僕がぶった切るなんてこと、日常生活ではありえないじゃないですか。でも、あのスパルタ教育でついた地力は今の仕事にも活かされています。制作デビューが遅かった僕を追い込んでくれた当時のプロデューサーには、本当に感謝しています」
――その後、全国ネットのゴールデン番組を制作する東京支社制作部に異動するわけですか。
「そうです。東京へ出てきてしばらくは『チェック!ザ・No.1』('08~'09年)や、『(地球感動配達人)走れ!ポストマン』('08~'09年)などの番組にディレクターとして参加しながら経験を積んで、全国ネットでも通用する制作のノウハウと人脈をゼロから築きました」