「プレバト!!」が好調な理由は“リアル”だから
――「プレバト!!」が始まったのは'12年。この企画はどういう経緯で生まれたのでしょうか?
「僕は与えられた放送枠に最適な“商品”が何なのかを最初に考えます。決して自分がやりたい企画が先ではないし、枠を決めてもらわないと全く企画が思いつかないんです(笑)。『プレバト!!』の場合は、木曜の夜7時という放送時間と、メーンの出演者は浜田雅功さん、ということが先に決まっていて、ついては、この枠を水野に任せるぞ、となったんです。平日夜7時の主な視聴層は主婦ですから、まずは主婦の方々に楽しんでもらえる番組でなければならない。つまり、刺激的なお笑いよりも情報性が求められます。なおかつ裏には『VS嵐』(フジ系)や『いきなり!黄金伝説。』('98~'16年テレビ朝日系)といった華やかな人気番組ばかりが並んでいたので、それに埋没しないようにするには、敢えて狭いジャンルの企画にしないと勝負できない。そう考えて、どんどん突き詰めていった結果、“浜田さん×知的バラエティー”という路線にたどり着いたんです」
――とても明解で論理的な考え方ですね。
「テレビの制作を志望していたのに入社から6年間も営業マンとして働いた演出家って、他の局にもあまりいないんですよね。制作に配属されてからも生え抜きの後輩たちにコンプレックスもありましたし。でもこの異色ともいえる経歴が、番組を“商品”として捉える意識を高めてくれたと思います」
――「プレバト!!」では、芸能人のみなさんが作ってきた俳句に対する、“毒舌俳句先生”こと夏井いつきさんの辛口コメントも話題に。講師の方々による的確かつ意外な添削は番組の名物となって好調を維持しています。
「好調な理由は“リアル”だからだと思います。先生たちは全く妥協しないし、芸能人も真剣に取り組んで作った作品だから、講師の方々の辛口コメントやランキングの結果に対して、一喜一憂するわけですよね。そして、それを浜田さんが煽ってくれるわけだからスタジオは絶対に盛り上がります。だからインターネットなんかではよく、『この番組は、出演者が面白くしてくれるから、スタッフはラクでいいよね』っていう感想を目にするんです。でも、実はこれが僕の理想(笑)。それって裏を返せば、出演者の個性が100%発揮できてる企画ってことですからね。設定だけを用意して、あとは出演者任せ、という風に見えるのが一番いいと思うんです」
――実際は、スタッフの皆さんは綿密な準備をされているんですよね?
「……どうでしょう(笑)。でも、特に『プレバト!!』は、出演者が強力だからスタッフの演出は目立つ必要はないんです。作り手の計算が見えちゃうと、リアルじゃなくなるような気がするんです。僕らがやるべきことは、スタジオの“ライブ感”を視聴者に届けること。だから収録も、ほぼ生放送のようなスタイルを心がけています」
――確かに『プレバト!!』は収録時間が短くて、段取りよく進行していきますもんね。
「浜田さんの番組に漂う、あの生放送のようなライブ感は、浜田さん、そして浜田さんと長年番組を作ってきた先輩方が築き上げてきた“偉大な職人芸”だと思うんです。それを僕もしっかり叩き込まれてきました(笑)。今は編集技術やCGがどんどん進化していますけど、出演者のむき出しになった感情には絶対に勝てない。バラエティーは現場の空気が最も重要だと思っています」