お笑い芸人が音楽番組MCを務める魅力と葛藤とは?「69号室の住人」MCグランジ遠山が告白
3年目に突入したTOKYO MXで放送中の「69号室の住人」(毎週火曜深夜1:35-2:05、TOKYO MX)。MCを担当している遠山大輔(グランジ)がアーティストの音楽にまつわることからプライベートなことを引き出している音楽トーク番組だ。幅広いアーティストの意外な素顔が見られるのも魅力のひとつ。今回は遠山に、MCとして大事にしていることや、昨今の音楽番組についてインタビュー。7月1日(金)、2日(土)に東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われる番組発の初ライブイベントについての意気込みも聞いた。
「テロップも必要なところしか入れない」良さ
――スタートから3年経ちましたが周りからの反響はいかがですか?
遠山:声をかけられることがこの1年くらいで増えてきて、「やっと浸透してきたのかな?」と思います。何よりもゲストのアーティストの方が楽しんでくださっているのがうれしいです。
この番組は他の番組と違ってカメラの台数やスタッフの数も極力少なくしているんですよ。あくまでも僕の部屋に来てもらっているような雰囲気をスタッフ全員で作り出していて…。だからこそゲストの方々はリラックスして話してくれているのだと思います。
――プライベート感のある雰囲気が、ここでしか聞けないトークを生み出しているんですね。この番組ならではと感じるところはありますか?
遠山:最近の音楽番組は、多くのゲストが矢継ぎ早に歌っていくものとトーク中心のものがあると思いますが、この番組はどちらかといえば後者。その中でもいいなと思うのは、演出が一切なく、仰々しくないところです。
番組を見ていても思うのですが、テロップも必要なところしか入れないんですよ。テロップって面白さや重要なことを伝えることができますが、目から入ってくる情報が増えることで、アーティストさんたちの表情をきちんと見られていないこともあって…。そういう意味ではありのままが映っている気がします。
「HEY!HEY!HEY!」を見て育った遠山の思い
――トークが中心だと、音楽番組というよりバラエティー番組になりがちですもんね。
遠山:たぶん、僕がゴリゴリのお笑いマンだったらそれをやりたがったと思うんですよ。もちろん学生時代から「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」(1994~2012年、フジテレビ系)を見てきたので、自分のフィールドに持っていって、アーティストの魅力的な部分を見つけ出し、笑いで落とすというのには憧れはあります。
ただ、当然ですがダウンタウンさんのようにはできないし、いかんせん僕は音楽のことが好きすぎるので単純にゲストにイチファンとして聞きたいことがたくさんある。そこにはお笑いはいらないってどこか思っているんですよ。
それはやっぱり長年「SCHOOL OF LOCK!」(2010~2020年、TOKYO FM系)というラジオ番組をやってきたというのが大きいかもしれない。この番組はどこかラジオっぽい雰囲気がありますから。
――お笑い番組のように自分のフィールドに持ってくるのではなくゲストに寄り添う形だと、トークを引き出すのは技術も必要となってきそうですが…。
遠山:よく、「いいトークを引き出しますね」と言われますが、そんな感覚は僕にはなくて…。単純に疑問に思っていることを聞いて、みなさんが優しいからそれに答えてくれているだけで。アーティストの方のサービス精神旺盛なところに感謝です。
ただ、聞きたいことを聞くにしても気にしていることはあります。スタッフさんが台本を作ってくれているのでその流れを見つつ、「自分の聞きたいことはここで聞けるかな?」と考えたりしていますが、ただ自分が疑問に思ったからといって、必ず聞こうとは思っていません。ある程度、流れに任せるというか…自分の話をしたいがためにトークを誘導していたら、それは単なるエゴですから。あくまでもみなさんが話したいこと、その場で生まれたことを大事にしています。
その中であえて大事にしているのは、上から目線にならないようにすること。当たり前ですが僕は評論家ではないし、ただのリスナーなので。ただ、アーティストの方は不思議に思っているかも。芸人なのになんでこの人はボケないんだろって。だから代わりにボケている人もいるかもしれない(笑)。それくらいアーティストは面白い人がたくさんいるんですよ。