<セックス・ピストルズ>脚本のクレイグ・ピアースが思い語る「ドキュメンタリーを作ろうとしているわけじゃない」
“まさにこれだ!”となる脚本を生み出すまで
――この番組は、スティーヴ・ジョーンズのメモワール(回顧録)をもとにしています。本をテレビの脚本にするプロセスはいかがでしたか?
クレイグ・ピアース:とても難しかったよ。回想録とか伝記は、明らかに、彼が当時どのように感じたり、考えたりしていたかについての内面の議論といったものだ。出来事に対する彼の考察を通して、回想録の多くの豊かさを入手できる。
彼が当時それらの出来事をどのように見ていたか、また今それらをどう思っているかということでね。当時の彼と、今の彼は違う、とかいろいろあるんだ。もちろん劇作家として、内面のことを取って、それを具体化する方法を見つけるのが仕事だよ。ドラマを作るんだ。アクションと言った方がいいかな。でも、交流(キャラクター間のやりとり)というのが僕が探している言葉だ。これらの内面のことに光を当てるキャラクター間のやりとりだよ。
いつも間違ったスタートがたくさんある。いろんな間違った方向転換や袋小路、行き止まりを経験するまで、どの方向に進むべきか決してわからないものなんだ。だから、それは長いプロセスだよ。
僕は元々最初のエピソード、パイロット版(第1話)だけを書いていた。パイロット版にすべてのキャラクターたちが出てくるわけじゃないけど、パイロット版で具体化されていることは、基本的に、この番組の本質を反映していないといけない。
だから、たとえそれが60ページしかなくても、書いて、何百回と書き直して、書き直された60ページなんだ。何を求めているかというと、そのストーリーが何を言おうとしているか、ということだ。何かを言おうとしている大きなストーリーは何なのか?このエピソードのストーリーは何を言おうとしているのか?なんだ。(脚本を書く時)とても大まかな感じで始めるんだ。
なぜなら、よく知らないからだよ。それから、「そうだ。まさにこれだ!」となるまで何度も、磨いて、磨いて、磨くんだ。また、リサーチがある。すごい量の本を読んだり、見つけられるすべての人と話したりする。
人々は、彼らの時間をとても寛大に割いてくれた。セックス・ピストルズのドラマーだったポール・クックとか、そういった人たちはね。彼は今もスティーヴの親友なんだ。彼らは今、別々の大陸に住んでいるけどね。ポールは今もイギリスにいて、スティーヴはアメリカにいる。彼は、僕にスティーヴに関することを話してくれた。スティーヴの特徴的なこととかね。彼はいつもおかしい人だったとか。彼はいつも一緒にいたいと思う人だったんだ。なぜなら、彼はベニー・ヒル(イギリスのコメディアン)の物真似とか、テレビのコミックのスケッチとかをやって楽しませてくれたからだよ。今もスティーヴの親友で、またセックス・ピストルズのメンバーであった人から聞いたそういうちょっとしたことでも、キャラクターに光を当てるのにとても助けになったよ。
ダニー・ボイル監督は「すべての人をインスパイア―する」
――ダニー・ボイルをこのプロジェクトの監督に迎える重要性について、また彼がどんなエネルギーを今作に持ち込んだかについて教えてください。
クレイグ・ピアース:パイロット版の脚本を書いた後、僕はシリーズのアウトラインを書いた。それから、僕たちはその製作費を集めないといけなかった。僕たちには企画開発する資金はあったんだ。ネットワークを連れてこないといけなかった。
僕たちは、監督を見つけるために、大きくいろいろ当たることはするつもりがなかった。もし、彼をつかまえることが出来るなら、完璧な監督はダニー・ボイルだと思っていた。
それで、僕たちは彼に脚本を読んでもらうことができた。僕たちはこのことをよく知らなかったんだけど、今考えると、これは論理的なことだった。
ダニーは、セックス・ピストルズのギタリスト、スティーヴ・ジョーンズとまったく同じ年齢だった。そしてパンクは、ダニーにとってすごく重要だったんだ。
なぜなら、ダニーも労働階級のバックグラウンドの出身だったからだよ。彼によると、愛情あふれる家庭の労働階級のバックグラウンドだった。そして彼はマンチェスター出身だ。
彼は、とても賢いクリエイティブな子供の一人で、社会が彼らに何を提供しているかを見ていた。そしてその答えは、大して何も(提供してくれない)というものだった。でも、セックス・ピストルズやそういったバンドは、彼に何か言えるかもしれないということを信じさせ、実際言えるように鼓舞したんだ。ダニーは、音楽全般にとても情熱を持っている。また彼はストーリーにとても情熱を持っている。それで、彼は今作を引き受けたんだ。
ダニーは、素晴らしいビジュアル・スタイルを持っている。そして、混沌としたパンクの世界を僕は、出来るだけ脚本のスタイルで具体化しようとした。
でも、それをスクリーン上でうまくいくようにするための方法を見つけるためには、ダニーのようにビジョンを持った監督が必要なんだ。ダニーがやった素晴らしいことの一つは、彼が“バンド・キャンプ”というものを作ったことだよ。彼はそこで、役者たちを集めて、彼らに楽器を学ばせたんだ。
番組で見るすべての音楽は、それがスクリーン上で演奏されている時、実際に俳優たちがライブで演奏しているものを録音(録画)したものなんだ。ポストプロダクションで、再録したものはない。(事前に録音した音楽に合わせて)口パクすることはなかった。それはまた、(芝居の)リハーサルを始める前に、彼らがキャラクターたちを自分たちのものにし、バンドになることを可能にした。
それから、とても詳細にわたる長いリハーサル期間があった。僕はそこにいたよ。それはまた、キャラクターにさらなるレベルの本物らしさを足すことになった。僕は、リハーサルで見たことに合わせて、脚本を書き直したけど、とても多くのことを学んだよ。
でも、ダニーは素晴らしいビジョンと、題材に対する信じられないほどのコミットメント(献身)と情熱を持っていて、人々を刺激する。彼は一緒に働いているキャストやクルー、すべての人をインスパイアーするんだよ。
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