7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は「有吉クイズ」(毎週火曜夜11;45-0:15、テレビ朝日系)をチョイス。
「有吉クイズ」公共施設の運営は都なのか区なのか委託なのか
吉弘行、みちょぱ、ロバート秋山、箕輪はるか、バイきんぐ小峠が横並びに座っており、進行役の野村真季アナウンサーが「有吉クイズー!」と番組名をにこやかに宣言する。尺も23分程度で、いかにも深夜のバラエティ番組といった趣きに引かれ、思わず鑑賞してしまったこちらの『有吉クイズ』。冒頭、スタジオでのオープニングトークでひと笑いが起き、アナウンサーが笑いながら次の企画へと進行する姿も、なんだか懐かしい。こう、アナウンサーがスタジオの面白空気を保存しつつ、「さあ、それでは~」と進行役を全うする、あの感じ…。まさにあれこそ、テレビという感じがする。テレビお久しぶりです。
そこから画面は、ロバート秋山によるロケ映像に切り替わる。渋谷区文化総合センター大和田という公共施設にやってきた彼が、この施設を運営しているのが都なのか区なのか、はたまた委託なのかを、詳しく調べていこうという企画だ。これはすごい。興味深すぎる。この建物を、この空間を、このサービスを仕切っているのは、一体どこなのか。東京の街を歩いていれば、そんな疑問の連続である。都なのか、区なのか。12階建ての渋谷区文化総合センター大和田、今からこの建物に入って、一体どこがこの大規模な文化施設を仕切っているのかを調査してやろうというのである。これほど興味深く、面白いロケは他にない。最高の番組を引き当ててしまった。
建物に入るとまず館長が現れ、彼からこの建物のことが語られる。その話によると、この渋谷区文化総合センター大和田という施設自体は、その名のとおり渋谷区の所有なのだが、管理・運営を任されているのは『しぶや文化創造グループ』という団体である。統括・施設運営を担当する『東急コミュニティー』、ホール・学習室等の運営を担当する『パシフィックアートセンター』、警備・設備・清掃を担当する『サイオー』という3つの民間企業によって形成されている団体で、今現在の館長は東急コミュニティーの所属であることが語られる。所有は区で、運営は民間というわけだ。なるほど、大変興味深い…。
ノリノリの秋山はさらに建物内を練り歩き、施設ごとの運営を調べて回り、疑問には必ず同行する館長によって解答が得られる。館長の声が低いのもいい…。落ち着く声色で、テンポ良く、気になる情報を次から次へと得ることができる。いいんですか、こんなの。途中途中、スタジオ組から「どうでもいいよ」というツッコミが挿入されるのだが、”どうでもいい”とされるものを、”どうでもよくない”と考える人間による発信というのは、いつだって尊く美しい。都なのか区なのか委託なのか、その好奇心ひとつで突き進むロバート秋山の姿に、人間の誇り高さを見た。